新型コロナ不況で失業者数の急激な増加が見込まれる今、最低賃金を機動的に引き下げて失業者数増加を抑制することが必要である。(経済評論家 塚崎公義)
賃金は需要と供給で決まるべきもの
アダム・スミスは「神の見えざる手」という言葉を用いて、「経済の事に政府が介入すべきでない」と説いた。もちろん例外もあるが、これが現在でも経済学の大原則である。
物(財およびサービス、以下同様)の値段は需要と供給の一致する所に決まるべきであり、その価格を均衡価格と呼ぶ。賃金についても同様に、労働力の需要と供給の一致する所に決まるべきであり、その賃金を均衡賃金と呼ぶ。
不況期には労働力の需要が減るため、失業が生じる。これは、賃金が均衡賃金を上回っていることを意味している。その理由が最低賃金の存在なのだとすれば、それを引き下げることによって賃金が下がり、失業を減らすことが期待できる。
一般論としては、賃金が均衡賃金を上回っている理由として、名目賃金の下方硬直性が重要であるといわれている。労働者は「賃下げ」に強い抵抗感を感じるため、賃金の引き下げが容易ではない、ということである。
もっとも、正社員の給料と比べれば、アルバイトなど非正規労働者の時給については引き下げに対する抵抗感は少ないと思われる。最低賃金が問題となるのは主に正規労働者の時給であろうから、最低賃金の引き下げにはある程度の効果が期待できよう。