肯定表現ができる人の強み

 しかし、日常生活の中には、あれがだめだ、これがだめだと、ネガティブなフレーズが散乱している。ついネガティブなことを口に出してしまいがちだが、それを言葉や目の色、顔色などにも出すことなく、ポジティブに表現できればよい。

 そこで、職場でよく使われるネガティブ用語を、意味を変えないで、瞬時にポジティブ用語に切り替える演習を行う。例えば、「そんな意志の弱いことでどうする」という否定表現を、「柔軟で、協調性があって素晴らしい」というように肯定表現に言い換える。

「暗い」は「落ち着いている」、「せっかちだ」は「迅速だ」、「のろのろやっている」は「慎重に取り組んでいる」という具合だ。「朝令暮改」は「臨機応変」、「過去にこだわる」は「経験を大事にする」、「話が長い」は「話が丁寧」というように表現すれば、肯定表現になる。

 簡単なことのように思えるかもしれないが、実際に演習をやってみると、肯定表現が次々とすぐに口に出せる人と、あれこれ考えているうち、しまいに口をつぐんでしまう人とに分かれる。行動と話法で瞬発力をもってすぐに肯定表現が繰り出せる人と、頭で考えて行動と話法で繰り出せない人に二分されるのだ。

 しかし、頭で考え込んでしまっていた人も、何度かこの演習を繰り返すと、短い秒数で肯定表現を口に出せるようになる。さらに反復演習していくと、無意識のうちに肯定表現ができるようになる。「習うより慣れろ」とは、このことだとつくづく思う。

 肯定表現を瞬時に繰り出すことができる人は、モチベーションレベルが高い。モチベーションレベルが高い人は、スキルが上がりやすい。スキルが高い人は業績伸展への貢献度が高い――。このような背景から、持続的成長を遂げているビジネスパーソンは、肯定表現の使い手だといえる。

行動が意識を変える

「意識が行動を変える」という考え方がある。しかし、意識を変えようと思っても、なかなか変わらない。「成果を上げることに貢献する意識を持とう」「スキルを上げるという意識を持とう」「モチベーションを高めるという意識を持とう」と思っても、時間がかかるし、そういう意識を持てたとしても、具体的に何をどうして行動に移せばよいのか、その段階でまたハードルに直面する。

 そこで、私は、「行動が意識を変える」という考え方を取っている。それも、できるだけ簡単で、単純な行動であればあるほど、短い時間でその行動が身に付く。さらに、ケースが多ければ多いほど、身に付けやすい。

 否定表現を肯定表現にするということも、とても簡単で単純な行動だ。否定表現は身の回りにこれでもかというくらいにあふれていて、ケースに事欠かない。否定表現を瞬時に肯定表現に切り替える瞬発力が、業績伸展のためのとても重要なコアスキルといっても過言ではない。