文系のなかには、理系コンプレックスを抱えている人は少なくありません。しかし、「読書においては文系がまさっている」と、この本に出合うまではそう思っていました。しかし……。新刊『理系読書 読書効率を最大化する超合理的サイクル』は、理系が実践している合理的な方法を読書に応用した技術です。著者は、東大生500人以上、医大生を2000人以上輩出した元駿台予備学校ナンバーワン化学講師で、バリバリの理系。本をまるで理科の実験のように扱い、最短最速でスキルハントする。インプットとアウトプットが速すぎて、これにはもうお手上げです。「速く読むこと」や「大量に覚えること」を目的とする読書術とは、一線を画した内容。最短最速で著者の経験知やノウハウを自分の頭にインストールし、自分の問題解決に役立てる至極の読書術です。
情報を絞ることで、変化を起こしやすい
本を読む際は、情報を絞れば絞るほど、変化が起きやすくなります。
お湯を沸かすときのことをイメージしてみてください。コップ1杯分の水と、ヤカン1杯分の水では、どちらが早くお湯が沸くでしょうか。コップとヤカンに与える熱量が一定なら、当然、コップ1杯分の水のほうが早くお湯になりますよね。
ではコップ半分の水なら? コップ1杯分の水よりもさらに早く、あっという間に熱湯になります。
読書から得られる効果も、これと同じです。大きな変化を起こすには大変な時間と労力が必要となりますが、小さな変化を起こすことは、手間なくすぐにできるのです。
著者のノウハウが詰め込まれた本を読んで、丸ごと1冊分実行しようとするのは、起こそうとする変化としては大きすぎます。実際に変化が起こるまでに時間がかかりますし、途中で挫折する可能性もあるでしょう。それよりも、数ページだけ読んで「小さく」「徐々に」実行したほうが、確実に変化を起こすことができます。
生物には本来、変化をあまり好まない性質があります。生物学で「ホメオスタシス」(恒常性)といいます。
人間などの哺乳類には体温調整機能があります。外気温が高いときに、汗をかいて体温を下げ、体温を一定に保とうとする機能のことです。
体だけでなく、脳にもこのホメオスタシスは当てはまります。人の脳はあまりに急激な変化にはついていけず、無理やり変化を起こそうとしても元に戻ってしまうのです。
「早起きをしよう」と決意したからといって、いつも7時起きだった人が、いきなり翌朝から4時起きを習慣化するのは難しいですよね。きっと3日もしないうちに挫折します。
変化を起こそうとするなら、いきなり3時間も早起きするのではなく、「いつもより10分だけ早起きする」とか、「寝る時間を30分早くする」など、ごく小さなステップから始めることがホメオスタシスを打ち破る秘訣です。
本に書いてある内容を実行するときにも、抽出する情報を絞り、小さな一歩から始めることが、上向きの変化を起こすためには有効な手段となるのです。