就活生の2人に1人が
被害経験あり?

 リクハラには、就活生や内定者に対する「セクハラ」や「パワハラ」などのほかに、内定者に対して、他社に対する就職活動を控えるよう働きかける「オワハラ(“就活終われ”ハラスメント)」なども含まれる。

 19年にビジネスインサイダージャパンが実施したアンケート調査によると、就活生の実に半分は、就活セクハラの被害経験があるという。被害経験のある就活生のうち75%が、その企業や大学などの関連機関、さらには身近な人にも相談できなかったという。

 これまで社員同士のハラスメントなどは、多様な形で社会問題となり、一定の対策を実施する企業も増えている。一方で盲点となっていたのが、就活生らを含む社外の関係者に対するハラスメントだ。

 19年6月に国際労働機関(ILO)が採択した「仕事の世界における暴力とハラスメント条約」では、保護の対象に求職者や就活生も含まれている。しかし同年12月に日本政府が決定したパワハラ防止法の施行に向けた指針では、保護の対象は企業と雇用関係がある労働者に限られ、就活生に対するパワハラ防止策を義務づけることは見送られている。

 政府の対応の遅れと同じように、日本の企業でも、就活生に対するハラスメント防止のためのルールや制度の整備は整っていない。

「出会い系サイト」として
悪用される就活アプリ

 近年、リクハラが増える背景にあるのが、就活マッチングアプリや就活SNSなどの台頭だ。

 大林組社員による事件では、被害者の学生と社員はOB・OG訪問用のマッチングアプリで知り合ったとされている。OB・OG訪問用のマッチングアプリは、学生とその大学の卒業生であるOB・OGをつなぐためのサービスだ。

 登録する社会人は、企業の公認アカウントを利用する採用担当者ばかりではなく、個人でアカウントを登録し、ボランティアで学生の就活相談に乗るユーザーもいる。そして、事件を起こした大林組の社員は、この後者のボランティアユーザーだったとされている。

 こうした就活用のマッチングアプリを、学生と知り合うための「出会い系サイト」として悪用する社会人が増えているという。就職活動中の学生は、企業に対してより弱い立場にある。そのため仮に、多少の違和感や不信感を抱いても、OB・OGの言うことを我慢して聞いてしまう。この力関係の差が、ハラスメントを生み出しやすくしているのだ。

 パナソニック産機システムズでは、内定者向けの交流サイト上で社員の高圧的な投稿がエスカレートし、内定者を自殺に追い込んだ。同サイトは、投稿内容などから学生らの意欲を判別して、内定辞退者を早期発見する機能を売りにしていたという。こうした交流サイトに、研修の一環として、内定者20人全員を登録させていたというのだ。

 最近では優秀な人材を囲い込むべく、多くの企業が内定者コミュニティーなどをつくって、学生を囲いこんできた。住友商事も、事件後の調査では、OB・OG訪問マッチングアプリに、若手から中堅まで、約350人の社員が登録していたという。企業の方針として、より良い人材を獲得するためにマッチングアプリを導入するケースも増えてきていた。