経理・財務の仕事は「事業部門の後処理」ではない

 日本企業では、経営企画、経理・財務、人事などのコーポレート部門より、お金を稼ぐ事業部門の立場が強いのが普通です。それゆえ経理・財務は、M&Aでも新事業でも顧客開拓でも、戦略が決まったあとからの支援がメインの仕事。つまり、後処理です。

 こうしたあり方について、橋本さんはワールドクラスの常識とはまったく異なると言います。

橋本「ワールドクラスにおいて経理・財務部門の仕事は、事業部門がより多くのキャッシュを稼ぎ出せるように支援することです。確実に売上拡大が望める事業でも、それを上回る規模で運転資金等のキャッシュアウトフローが膨らみ、いつまでたっても将来キャッシュフローのNPV(現在価値)が改善しないなら、やるべきではない。時には事業サイドにそうはっきりと伝えることも我々の使命です」(これが、前回の質問の答えです)

 とはいえ、ダメ出しをすることだけが経理・財務部門の仕事ではありません。

橋本「どうすればROIC(投下資本利益率)やキャッシュフローをもっと高くできるかについて、専門知識を武器に事業部のメンバーと一緒に考えて伴走できるはずです。それ以外にも、財務部門が企業価値の創出に貢献する方法はいくらでもある」

 たとえば、次のようなアイデアです。

●バリューチェーンの見直し(仕入れや販売、あるいは顧客)によって利益率・キャッシュフローを上げられるはずだ。

●そのターゲットの顧客は他の事業部と既に取引があるので、そのチャネルを活用しよう。

●長期滞留の在庫はいつか売れるか知れないが、そのときの価格とそれまでの物流費用で本当に利益が出るのか?

●資金手当てに苦しんでいる良い関係にあるパートナーの顧客や仕入業者に金融機関へ口添えをする。

●昔から続いているリベートや割り戻しは現在本当に有効に機能しているか?

●除却すべき固定資産を廃棄せずに放置して(固定資産税を払い続け)、除却損による税効果を図っていない。

●投資に対する補助金や税金の軽減を働きかけ交渉する。

●ワーストケースシナリオを想定した場合の対処を検討する。

●あの国のあのビジネス・パートナーを使えば、もっと効率化ができるはずだ。

●M&Aで最近グループに加わったばかりのあの会社なら、別のルートを持っているはずだ。

●金融機関からではなく、グループ内で借り入れをして資金の手当てができる(インターカンパニーローン)。

 ワールドクラスの財務部門は、こうした情報と知識を蓄積して、全社的な価値向上に貢献しています。