塩野義製薬,中国平安保険グループ日中の異業種タッグ、塩野義製薬と中国平安保険グループ Photo by Masataka Tsuchimoto

塩野義製薬が、世界的なヘルステック企業として知られる中国平安保険グループと組み、中国で新薬研究に乗り出す。近年成功確率が下がる新薬創出の活路を米国に求める製薬企業が多い中で、塩野義の“逆張り”戦略は果たして成功するのだろうか。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

ヘルステック企業との異業種タッグで
中国・アジアで事業展開を目指す

「あくまでも創薬型製薬企業としての強みを研ぎ澄まし続けていく。ただ目指すのは製薬企業ではない、HaaS(ヘルスケア・アズ・ア・サービス、ハース)カンパニーです」

 世界的なヘルステック企業として知られる中国平安保険グループと国内製薬中堅の塩野義製薬との合弁会社「平安塩野義」(出資比率は塩野義51%、平安保険グループ49%。本社は中国・上海および香港)の事業計画説明会。塩野義の手代木功社長は冒頭のように力説した。

 塩野義が目指すHaaSカンパニーとは、従来の製薬企業の形にとらわれず、顧客(患者)が必要とするヘルスケアソリューション(予防、診断、治療、治療後のフォローなど)をトータルで提供する企業だ。1社単独あるいは競合他社と組んでも実現できないため、異業種の企業と強みを持ち寄ってタッグを組む。

 平安保険グループは世界にあまたある創薬型製薬企業の中から塩野義を選んだ。塩野義も、中国で医療ビッグデータを扱う複数の企業から協業の打診があったが、平安保険グループを選んだ。その理由について手代木社長は「ワンストップで健康の面倒を見る世界観が一致したため」と語る。

 中国は世界一の人口を抱え、医薬品市場は世界2位の約15兆円(2018年)に上り、成長著しい。新会社の平安塩野義は、中国はもちろんアジア諸国でも事業を展開する予定だ。

 具体的には平安保険グループの世界最大規模のオンライン診療と塩野義の医薬品や健康食品販売のコラボレーションなどで、まずは24年度に売上高700億円超を目指す。手代木社長は「塩野義をサステイナブルな会社にする上で、平安塩野義は大きなポーション」と期待する。

 もっとも、塩野義にとって平安塩野義の役割はそれだけではない。