コロナ禍で不要不急の受診が減り、薬局が受ける処方箋が減少するなど、薬局経営も大ピンチだ。そして薬局のコロナ対応は、インフルエンザ治療薬における「中外製薬vs第一三共vs塩野義製薬」の戦いに波及している。特集『コロナが映す医療の闇』(全14回)の#06は、薬局経営と共にインフル薬を巡る最新事情をレポートする。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
コロナで薬局が大ピンチ
薬局のコロナ対応がインフル薬に波及
全国の薬局経営が厳しい。新型コロナウイルスの感染拡大で医療機関への不要不急の受診が減ったことで、医者の処方箋を持って薬局を訪れる患者も減少し、5月は前年同月比で約25%も減った。6月以降はやや回復したようだが、コロナ時代では受診抑制が続き、ダメージは長期化しそうだ。
コロナ危機以前から、27%の薬局が赤字経営(厚生労働省「2019年医療経済実態調査」)という“構造的不況”に陥ってはいた。そんな中でコロナ危機に直面。業界団体からは、今年は赤字経営の薬局が30%を超える予想が出ている(詳細は本特集#07『「コロナで薬局の3割超が赤字」の惨状を日本薬剤師会首脳が激白』参照)。
野村證券の繁村京一郎アナリスト(医薬品・ヘルスケアセクター)は大手調剤薬局チェーンを念頭に、生き残る薬局の条件として、「高度医療や在宅調剤など薬剤師本来の職能を発揮できること」「敷地内薬局が地域の旗艦薬局として診療所等と連携を取れること」「オンライン服薬指導と薬の配送に対応できる人員配置やシステム導入ができること」を挙げている。
繁村アナリストは、M&Aで多店舗展開して大量の処方箋をゲットする再編・拡大期は終了し、薬剤師の質、在庫管理能力、財務余力などが生き残りの鍵となる時代に入るとみている。注目はアインホールディングス(HD)、スギHD、クオールHD、日本調剤など大手調剤薬局チェーンの動き。今後の薬局サバイバル時代の到来は避けられないだろう。
経営面だけでなく、現場の薬剤師もコロナ対応で四苦八苦している。問題の一つに、コロナ感染者と症状が似たインフルエンザ感染者への対応がある。実はその対策が、大手インフルエンザ治療薬メーカーである中外製薬、第一三共、塩野義製薬の販売競争にも波及している。