単なる選挙向けのポーズではない。米国と中国の対立がのっぴきならない事態に陥りつつある。特集『賢人100人に聞く!日本の未来』(全55回)の#46では、社会学者の橋爪大三郎氏が米中対立の背景、その本質を指摘する。(ダイヤモンド編集部論説委員 小栗正嗣)
米国が気付いた
中国のマスタープラン
――そもそも米中はなぜ今対立しているのでしょうか。
対立の本質を知っておく必要があります。背景にあるのは中国経済の成長です。購買力平価に基づく国際ドルベースではすでに米国をしのぐ規模になりました。
そして、習近平政権の強硬路線。香港、新疆ウイグル自治区に対する政策、インドとの紛争、南シナ海のゴリ押し基地建設、そして台湾の問題……。これらは習近平国家主席のキャラクターの問題ではなく、中国の国家意思、人民の意思によるものではないか。要は一つのマスタープランの中で進んでいる大きなプロジェクトなのではないか。
このことをようやく認識した米国が態度を変えた。それまでは貿易不均衡、人民元の操作、スパイ問題など、個別に対応していたのを大転換させた。これが米中対立のきっかけです。中国からすると突然のことですが、米国側からするとようやく気が付いて正しい路線に戻ろうとしていることになる。
そのマスタープランとは一口で言えば中国は、中国共産党は今のままでいい。ただし、中国は過去、国際社会の中で不当に小さく扱われてきた。今や実力がある中国は、国際社会の中で正しい地位を得るべきだ。米中の二大大国がよく相談しながら世界を仕切っていこうではないかと。これがマスタープランですね。米国はこれを許容できるのか、ということなのです。
――中国が改革開放政策を打ち出して、そろそろ40年になります。
中国は改革開放後、西側のルールに合わせてきた。頭を下げて西側世界に同調したおかげで、資本や技術の提供を受け、仲間に入れてもらった。この一応仲間に入れてやるというのを「関与政策」といいます。
仲間に入れてもらったことで、産業基地になり得た。この40年近くで毎年10%近い成長を続けていることになりますが、こんな国は歴史上他にありません。10%近い成長だと、7年で2倍。40年近く続ければほぼ40倍になります。
だから子猫だったものが虎になった。構造がそう変わらないまま大きくなっちゃった。