Elkind氏はこれまでに、脳梗塞と感染症の関連に関する複数の論文を発表している。2019年の小規模な研究では、インフルエンザ様症状を呈する感染症の発症15日以内に、脳梗塞のリスクが4割増加すると推算している。またNavi氏は今年7月に「JAMA Neurology」に掲載された論文で、インフルエンザで救急外来を受診あるいは入院した患者のうち、脳梗塞を発症したのは0.2%であったのに対し、COVID-19の患者では1.6%に上ると報告している。

 インフルエンザやCOVID-19と脳梗塞の関連を結びつけるメカニズムは明確には分かっていない。ただし、感染に対する体の免疫反応として生じる炎症が、その一端を担っていると考えられている。「炎症が脳梗塞危険因子であることは知られており、炎症が強いほど脳梗塞リスクは高くなる可能性がある」とNavi氏は解説する。一方、Elkind氏は免疫と血液凝固の関連や、感染症による脱水の関与に注目している。それらに加え、「新型コロナウイルスは、いくつかの未解明の機序を隠し持っているようだ」と語る。例えば、可能性として、血管内皮細胞に結合して血栓を起こしやすくすることも考えられるという。

 今年の8月には、米疾病対策センター(CDC)から、インフルエンザで入院した成人患者の約8人に1人は心臓の合併症を持っていることが報告された。今、専門家はインフルエンザシーズンに備えて、予防接種の必要性を強調している。Elkind氏によると、AHAは長年、心血管疾患の合併症リスク抑制のために、インフルエンザの予防接種を推奨してきたという。そして今年はさらにその推奨活動を拡大している。