未来は、アマゾンの動きの断片から読み取ることができる――そんな画期的な未来予測本が誕生した。アップルやグーグルをブランド評価で上回り、文字通り世界一のテクノロジー企業となったアマゾン。同社は巨大だというばかりではない。同様の大企業では類をみない年平均25%もの成長を続けていることは驚くべき事実で、このことは常に新しい分野に進出していることを意味している。そして、アマゾンが新たに進出した分野では、ライバル企業はその脅威に対抗すべく、アマゾンのビジネスモデルを研究し、自らのビジネスに取り入れている―ーさまざまな業界がまさに「アマゾン化」しているのである。『アマゾン化する未来:ベゾノミクスが世界を埋め尽くす』(ダイヤモンド社刊)は、フォーチュン誌のトップ・ジャーナリストがアマゾン内外を徹底取材して、コロナ禍でもさらなる大きな成長を遂げたアマゾンの秘められた内実に迫り、アマゾンのライバル企業がどのように対抗しようとしているかを探りながら、未来の世界を見事に描き出している。本記事では、同書から特別にそのエッセンスを抜粋していく。(小林啓倫訳)

成長するアマゾン
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コロナ期に際立った成長を見せたアマゾン

 危機の中で、アマゾンが持つ世界で最も進んだデジタルの力がフル活用された。

 本書でさまざまな形で触れるが、アマゾンでは以前は管理職が行っていた小売りに関する意思決定の多くが、今ではAIアルゴリズムによって行われており、フェイスマスクや除菌剤のボトルをどのくらい注文するか、サイズはどうするか、そして広大な倉庫ネットワークのどこで在庫するかを決定している。

 また、デジタル化された採用プロセスにより、同社はコロナ期の数週間で17万5000人の従業員を追加採用することができた。

 アマゾンが巨大なオンライン小売事業を展開できるのは、このデジタル化のおかげだ。さらに、消費者が自宅にこもり、必要不可欠な品々を求めてアマゾンを頼るようになったことで、同社への注文は26%も増加したが、この急増にも対応することができた

 アマゾンは過去数年間、彼らの巨大なEコマース・プラットフォーム上で活動する、200万以上の中小小売業者の一部に、AIアルゴリズムに基づく融資を行ってきたが、パンデミックの影響で物理的な店舗が閉鎖されたことで、彼らの多くは資金不足に陥っている。その資金需要の急増に対応するため、アマゾンは金融大手のゴールドマンサックスと提携した。

 ゴールドマンサックスは、サードパーティーの小売業者に、ある期間や限度枠内で自由に借入や返済ができる、リボルビング・クレジットを提供すると発表した。これらの小売業者が提供する商品は、現在アマゾンで販売されている商品の58%を占め、アマゾン自体の小売事業よりも売上げが急増している。これはベゾスにとって、収益性の高い融資事業を拡大し、アマゾンを金融界の巨人に一歩近づける好機となる。

 こうしたアマゾンの対応を見て、投資家たちは同社がパンデミック後に、さらに強力なプレーヤーになるだろうと予測している。

 危機の最初の数ヵ月間で、同社の株価は25%上昇し、ジェフ・ベゾスの純資産は290億ドル〔約3兆円〕増の1440億ドル〔約15兆円〕となって、世界で最も裕福な人物としての地位を維持した。

 これは、2019年の離婚調停で元妻に380億ドル〔約4兆円〕を渡した後の話だ。投資銀行RBCのテクノロジーアナリスト、マーク・マヘイニーは、次のように述べている。
「パンデミックが本当に終息すれば、店舗を持つ小売業の競争力は弱まり、アマゾンはより突出した勝者になっているだろう」