今回の「運転手のマナーが悪いので注意」という供述は取ってつけたような印象しか受けず、やや信憑(ぴょう)性に欠ける。やはり、前回事件の供述と同じ動機とみるのが自然だろう。

 しかし、疑問なのはただそれだけのことで、なぜそんなにも危険な行為を繰り返したのかということだ。刺激が欲しい、ストレスを解消したいという理由なら、いくらでも方法はあったはずだ。

 危険運転の被害を受けた車のドライバーがとっさのことに驚き、成島容疑者の自転車を回避しようとハンドルを切り過ぎてしまったらどうなるか…。

 たまたま歩行者がいたら巻き込んでしまい、無傷では済まないだろう。ブレーキやハンドル操作が間に合わず、電柱や建築物などに激突していたら車は損傷し、ドライバーが大けがを負っていた可能性もある。もちろん、パニックになったドライバーがハンドル操作を誤り、成島容疑者本人がはねられるケースだってあり得たのだ。

 成島容疑者の危険行為によって事故につながったケースはなかったが、当たり前の常識がある方なら、こうした大惨事につながる可能性があったことは容易に想像できるだろう。

 映像を見る限り、こんな行為が数十件も繰り返され、今まで事故がなかったということの方が奇跡のような気さえする。

改正法案を起草した警察官僚も想定外か

 今回適用された「あおり運転」は2017年6月、神奈川県の東名高速道で夫婦が死亡した事件をきっかけに社会問題となり、厳罰化を求める声が強まった。

 法的に明確な定義はなかったが、19年8月に常磐自動車道で発生したあおり運転殴打事件が表面化したことで法改正の動きが加速。今年6月、「妨害運転」と規定した従来よりも罰則の重い改正道交法が施行された。

 改正道交法では、妨害運転を他の車の通行を妨げる目的での逆送や急ブレーキ、車間距離の不保持、危険な車線変更、幅寄せや蛇行、高速道路上の低速走行や駐停車など10の行為を対象としている。