費用をかけても、価値が増加するとは限らない

カノン そうか、期間収益が増加した価値で、期間費用は消費した価値なんだ。それぞれ別々に計算するということは、これらの対応関係はない、ということですか?

林教授 君はいいことに気づいたね。売上と売上原価は完璧とは言えないものの対応関係はある。

カノン そうですよね。りんごの例のように別々に計算しても対応はしてますよね。

林教授 だが、給与、広告費などの期間費用と期間収益(売上)との対応関係は曖昧だ。

カノン えっ、どういうことですか?

林教授 営業担当が頑張って得意先に商品を売り込んでも、その努力がその会計期間の成果に現れるかはわからないよね。次の会計期間に注文が舞い込むかもしれないし、全くの無駄に終わるかもしれない。広告費も同じように考えることができるね。

カノン 確かに。うちの会社ではたまに新聞やラジオで広告をするのですが、すごい反応があったかと思えば、全くなかったりと様々です。

林教授 つまり、価値を消費しても、価値が増加するとは限らないというわけだ。経営学者のピーター・ドラッカーは興味深いことを言っている。

コストの90%は業績を生まない90%から発生する。業績とコストとは関係がない(『創造する経営者』)