次世代のビジネスパーソンには、業務の専門知識だけではなく、経営をよくする会計の視点を通じて「自分の仕事を数字でとらえる力」、そして「数字で判断して、改善のための提案ができる力」が必須になります。
本連載では、11月11日発売の『マンガで入門!管理会計が面白いほどわかる本』(作・森岡寛、画・紅乃香菜)の内容を紹介しつつ、売上とは、コストとは、利益とは?固定費、変動費の違いとは?限界利益とは、貢献利益とは等、経営をよくする会計のしくみと基本について、著者の森岡寛氏がわかりやすく解説いたします。

売上、コストを「正しい数字」で把握していますか?

森岡寛(もりおか・ひろし) キャッシュフローマネジメント株式会社/財務マネジメント株式会社 代表取締役 1974年生まれ。高知県高知市出身。実家は製麺業を営む。中学卒業後は高校に進学せず、大検取得後の1995年、近畿大学に進学。近畿大学在学中、会計学研究会に所属し、管理会計の研究に従事。卒業後、会計事務所勤務を経て、2003年起業。起業後は、東京・大阪で中小企業のキャッシュ・フロー改善に特化した財務コンサルティングを展開。現在は「キャッシュフローの専門家」として、講演・執筆・コンサルティング業務に従事する一方、ITツールを活用してワークライフバランスの充実に努めている。妻と子ども2人の4人家族。著書に『マンガで入門!会社の数字が面白いほどわかる本』、『社長のための黒字の教科書』(ともにダイヤモンド社)がある。 http://www.cashflow.co.jp  http://www.zaimu.net

 会社は営利企業として「儲ける」こと、いわゆる黒字企業であり続けることが事業を存続させるための必須要件です。

 このため当然ですが、売上を上げて、コストを下げて、利益を獲得することが求められます。

 ここで問題なのが、売上、コスト、利益を「正しい数字」で把握しているかどうかという点です。もし、会社の毎月の会計処理が正しくなされていないと、「正しくない数字」で誤った経営判断につながる恐れがあります。

 例えば、以下のようなズレが生まれるケースが考えられます。

(1)売上…小売業であれば、基本的には現金商売ですので1日から末日の会計期間で売上が集計されます。

 しかし、掛取引で商品代金の入金時に売上を計上している場合、例えば、月末に売り上げた商品代金が、翌月に入ってから入金されるとなると、実際の売上は翌月に計上されるというズレが生じます(売上が発生した月に計上すべきところを、入金した別の月に計上することによるズレ)。

 その他、卸売業などでは会社の会計期間(主に末日)と自社の請求書の締め日(20日締めなど)が異なる場合、この集計期間のズレを調整せずに請求書の数字だけで売上を計上していると、実際の売上金額にズレが生まれてしまいます(20日締の請求書の数字のままに計上すると、前月21日~当月20日までの一か月間の数字が計上されてしまい、本来計上すべき1日~末日の期間と一致しないために、ズレが生じます)。

(2)コスト…コストに関しても同様に、会計期間と仕入や経費の計上ルールによるズレが発生することがあります。

 先ほどの売上と同様に、仕入の締日が20日の会社で請求書単位で仕入金額を計上するとなると、あくまで前月21日~当月20日の一ヵ月間の金額が仕入として計上されてしまいます。

 一方で、在庫管理で棚卸の数字を計上する場合、会計期間の期日に沿って毎月末日で在庫数字を計上するとなると、仕入は20日締めなのに、在庫は末日時点で計上されるというズレが生じます。

 また、経営者や社員の経費精算などでも、経費の使用日と代金の精算日の月が異なる場合にズレが生まれます。

 さらに、アルバイトやパートなど、時給により毎月の給与総額に変動がある従業員を多く抱えている会社の場合、15日締めや20日締めで人件費を計上していると、会計期間とのズレが生じます。