教育方針のすり合わせの前に
「叱り方」の共有が大切

 こうした夫婦の叱り方への違いがあると、子育ては常に壁にぶつかってしまい、夫婦ゲンカも頻繁に起こってしまうのです。教育方針については、夫婦間でいろいろな意見の違いが出てくると思いますが、その根源にはこの叱り方への相違点が関係しているらしいのです。

 私は教育評論家ではありませんので、子どもの気持ちに与える影響や人格形成における効果的な叱り方というのはわかりませんが、一父親として、先人たちの後悔とアドバイスからなるほどと感じたのは、子どもの前では決して「夫婦の意見の相違を見せてはいけない」ということでした。

 先人たちが言うように、どちらかが言った意見をどちらかが否定すると、子どもは混乱し、必ず都合のいいほうの意見を取るのは当たっているように思えます。ですので、まず注意したいのは、親は子どもの前ではどちらかの意見を否定せず、必ず子どもがいないところで事前に意見のすり合せをしておく必要があるのです。

 会社でも、共同経営者の言う経営理念が違っていれば、社員は分裂してしまうものです。そうならないためには、お互いがどんな意見の違いがあったとしても、社員の前では口を揃えるでしょう。それは夫婦間でも同じです。

 意見のすり合せというのは非常に難しいものですが、どう育てたいかという内容以前に、子どもが親の言うことを聞かなくなるという状況をつくり出さないことがコツのようです。教育方針というのは、「人に迷惑をかけずにいてほしい」とか「自分で人生を切り拓ける人間になってほしい」といったように、大局的には大きな違いが出ないものです。

 しかし、そうしたビジョンを共有していても、それ以前の日常的な接し方において、お互いの態度に齟齬が生まれます。お互いがどれだけ立派な子育て理念を持っていても、それを子どもの前で批判し合っていては、その後のあらゆる議論においても実行が難しくなるのだと、子育てに失敗したと感じている先人たちから教わりました。(第3回へ続く)


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