「すでに10電力体制は崩壊している」。エネルギー業界の重鎮で電力業界の企業史にも詳しい国際大学大学院の橘川武郎教授は、そう断言する。特集『電力大大大再編』(全7回)の#3は、橘川教授が電力業界の再編シナリオを大胆に予想する。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)
10電力体制は
すでに崩壊した
――現在の10電力体制をどう評価しますか。
端的に言うと、すでに10電力体制は崩壊しています。
――その理由は?
戦後に築かれた10電力体制は、私の定義においては四つの原理によって維持されてきました。一つ目が「民営」。二つ目が「地域別分割」。三つ目が「発送配電一貫経営(発電と送配電の両事業を経営する垂直統合型)」。そして最後の四つ目が「独占」です。
「独占」は、2000年から電力小売りが一部で自由化されたので、すでに揺らいでいました。
そして、11年の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故を契機に、電力システム改革が行われ、16年に電力小売り全面自由化が始まりました。これにより、「地域別分割」「独占」が崩れました。
さらに、20年に電力システム改革の総仕上げとして発送電分離が行われ、「発送配電一貫経営」も終わりを迎えました。残っているのは「民営」だけです。
電力業界は10電力体制が終焉を迎え、新しい時代に突入したといえるでしょう。
10電力体制から
6電力に集約される
――10電力体制が崩壊したとなると、再編が起こるのですか。
私は10電力体制が早晩、6電力体制になるのではないかと考えています。参考になるのが、ドイツです。
ドイツは1998年に電力小売り全面自由化に踏み切り、その後、発送電分離を行いました。電力小売り全面自由化が始まる前は大手8社でしたが、あっという間に4社に集約されました。
日本は福島第一原発事故がきっかけでしたが、電力小売り全面自由化、発送電分離という流れはドイツと非常に似ています。日本も同じで、やはり10電力体制は維持できないでしょう。
――具体的なシナリオは?