洋上風力会戦#1Photo:lovelyday12/gettyimages

米アップルなどのITジャイアントが「コスト度外視」でグリーンエネルギーを猛プッシュしている。アップルはすでに日本で太陽光発電プロジェクトに出資しており、洋上風力発電プロジェクトを次なるターゲットに据えようとしている。特集『洋上風力会戦 グリーンエネルギー新世紀』(全6回)の#1では、グリーンエネルギーを巡るITジャイアントの戦略を追う。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

洋上風力発電の成長の鍵は
GAFAにあり

 ある大手電力会社の幹部は、大口取引先から舞い込んだ商談をふいにして、じだんだを踏んだ。

 先方からの依頼は「再生可能エネルギー由来の電力を当社に直接調達してほしい」というものだった。依頼をそのまま受けられれば、収益を拡大できた。しかし、断るしかなかった。

 この大手電力が所有するのは火力発電所ばかり。再生可能エネルギー由来の電力を大量に、しかも直接供給することは不可能だった。

 大規模な発電所で発電した安価な電力こそが、大手電力の競争力の源泉。どうやって発電するかではなく、どれだけ安いかがユーザーである買い手(需要家)の関心であり、故に大手電力は強かった。

 しかし、時代は変わった――。商談を断った幹部は痛感した。

 需要家がどうやって発電するかに関心を持つようになった。原子力や火力などさまざまなタイプの発電所を抱える電力会社単位で買い先を選ぶのではなく、発電所単位で選ぶ時代がやってきたのである。

 気候変動問題に対処する国際的な枠組み「パリ協定」が採択されたのは2015年12月。ここから、世界は脱炭素社会の実現へ急速に動き始めた。

 これをけん引するのは、太陽光や風力を中心とした再生可能エネルギー、つまり二酸化炭素(CO2)を排出しない「グリーンエネルギー」である。世界で、大企業ら大口の電力ユーザーがグリーンエネルギーに殺到するようになった。

 日本では、グリーンエネルギーの柱として洋上風力発電の拡大にかじが切られた。30年までの経済効果は最大15兆円にも上るとされ、供給者サイドは目下、バブルの様相を呈している。洋上風力発電プロジェクトに大手電力会社のみならず、ゼネコン、総合商社、メーカー、銀行など多種多様な業界が群がっているのだ。

 バブルはいつかはじけるものだ。はじけずに産業として育つのか否か。

 その鍵を握るのが「GAFA(米グーグル、米アップル、米フェイスブック、米アマゾン)である」とエネルギー業界関係者は断言する。