大量採用は遠い昔!
バブル崩壊で業界大再編
1990年の金融業界はまさにバブル景気に沸き、新卒でも大量採用が行われていた。男女雇用機会均等法が施行された後ではあったものの、主に男性は全国転勤を伴う営業がメインの総合職、女性は窓口業務やバックオフィス業務を担う一般職(事務)という形で、性別で職種も分かれていた。
当時は上意下達の組織風土を持つ企業が多く、特に大事にされていたのが「GNP」だった。GNPとは国民総生産のことではない。義理(G)、人情(N)、プレゼント(P)のことだ。
しかし、そんな好景気も長くは続かない。90年代前半からバブル景気は崩壊し始め、地価の急落などで巨額の不良債権を抱えた金融機関は、大手を含めて再編と淘汰が進んでいった。金融ビッグバンと呼ばれる、金融市場の規制を撤廃・緩和して、市場の活性化や国際化を促す自由化も行われたが、狙いだった金融機関の再生にはつながらなかった。
平成の31年間に破綻した銀行や信用金庫、信用組合などは180を超え、大手銀行(都市銀行、信託銀行、長期信用銀行)も23行から5陣営に集約されている。大手行だった北海道拓殖銀行や山一証券の破綻については、就活生の親世代も当時「まさかこんな大手がつぶれるなんて…」と衝撃を受けたはずだ。
メガバンクは「一般職」が消滅へ
新卒採用数も15%減に
再編が進んだ金融機関を現在、より厳しい状況に追いやっているのが、日本銀行のマイナス金利政策や人口減少の影響だ。超低金利で貸出金利の向上は見込めない上、人口減で資金需要も減退している。業績は低迷しており、地方銀行では合併の動きも加速している。
また金融とテクノロジーを融合させた「フィンテック」、AIの導入、RPA(事務作業の自動化)などによる業務効率化が進んでおり、店舗の統廃合、窓口業務や事務を行っていた人員の配置転換の動きも加速している。
実際、メガバンクでは支店の事務や窓口業務を行う一般職を、業務の中枢を担う総合職に統合する動きが進んでおり、三井住友銀行では20年1月、みずほフィナンシャルグループ(FG)では21年度下期の移行を目指しているという。
これを受けて、メガバンク3社(三菱UFJ銀行、みずほFG、三井住友銀行)の21年卒の新卒採用数(計画値)は、全体で前年比15%抑制されている。具体的に見ていくと、三菱UFJ銀行は前年比22%減の400人、三井住友銀行は前年比16%減の530人、みずほFGは前年比7%減の510人となっている。かつてメガバンクの新卒採用といえば、1行で1000人超も珍しくなかったため、まさに半減だ。