金融のあるべき姿へ変化
採用コース、キャリアパスも柔軟に
冒頭で紹介した人気の低下は、ここまで紹介してきた業績低迷への不安や一般職の消滅が大きな要因といえるが、「ここ数年、金融機関は本来あるべき姿に変化しつつある」とリクルートキャリアのキャリアアドバイザー(金融担当)の水谷努氏は前向きに語る。
「例えば銀行では、最近は収入源として手数料収入の強化のみならず、企業へのソリューション提案、M&A、コンサルティング、将来を見据えた上での融資などに注力しており、そうした業務の専門性を備えた人材の育成に力を入れる体制に移行している。またデジタル人材の採用も活発化している」(水谷氏)
採用は以前のような「総合職」「一般職」から多様化している上、専門性を高め続けながら勤務地の希望を認めてくれるコースもあるという。
例えば、みずほFGのみずほ銀行では、総合職の中には入社当初の配属が「M&Aアドバイザリー業務」「アセットマネジメント業務」「リサーチ&コンサルティング業務」など、特定の部門への配属が決まっているコースがある。
もう1つの職系である専門職では、支店でリテール業務のプロフェッショナルを目指すが、希望するエリアについては、首都圏限定や、首都圏及び名古屋限定など希望を柔軟に認めてくれるという。遠くへの転勤は難しいといった事情がある人には、うれしい制度だ。
また三井住友銀行や三菱UFJ銀行では、少人数ではあるものの総合職として、情報処理やIT、プログラミング、人工知能といったスキルを生かせるデジタル人材を採用するコースもある。
今の金融業界の実態を
正しく知った上で就活を
こうした時代の変化があるにもかかわらず、バブル期以前のイメージから「やっぱり金融」と思う親、あるいはその反対で近年の業界の苦しい状況から「金融は終わった」と極端に捉える親や就活生はやはり少なくない。しかし、変わりつつある銀行の仕事内容や採用を見れば、どちらも正しい認識とはいえない。
金融業界に関心がある就活生は、過去のイメージにとらわれた両極端の声に惑わされず、「今」と「将来」に意識を向けて企業選びをすべきだ。親は、適切な情報をインプットした上で子どもにアドバイスしてほしい。