かつては経営の安定性や給与の高さなどから、人気企業ランキングで上位の常連だった金融業界。しかし、近年の収益力低下や店舗の統廃合などで将来性に不安が生まれ、人気は低迷中だ。そこで「金融業界はやめとけ」という声が増える一方で、いまだに「地元の地銀に就職して」「やっぱり金融が安心」と勧めてくる親もいるという。両極端の声に翻弄される就活生は、いったい何を信じればいいのか。今回は中でも銀行をメインに、金融業界の現状をつかんでいこう。(ダイヤモンド・セレクト編集部 林恭子)
学生人気が急落中の金融業界
親は「やめとけ」「行くべき」で二極化
かつて金融業界は、安定性・社会的地位の高さ・給与の高さから、公務員や総合商社と並ぶ人気業種の一つだった。しかし、近年では収益力の低下、店舗の統廃合が進み、メガバンクを中心に人員削減や一般職の採用を停止する方針が示されてから、その人気に陰りが見られるようになっている。
ブンナビ(文化放送就職ナビ)が行った学生アンケート調査(2019年12月)によると、「今年『就職人気が下がる』と思うのはどの業界ですか」という問いに対して、「都市銀行/地方銀行/信用金庫」と答えた人は44.8%と、他の業界を圧倒して最も多かった。ちなみに、「証券会社」は9%、「生命保険/損害保険」は10.7%だった。同じ金融業界内で差はあれども、全体として学生の金融業界への志望度が以前よりも低下しているのは確かだ。
しかし、こうした流れについて、就活生やその親の実態に詳しい就職みらい研究所の増本全所長は、「金融業界は、就活生にもその親世代にも、最もその状況が正しく伝わっていない業界の一つだ」と語る。
近年の金融業界の厳しい状況から「金融なんてやめとけ」と考える就活生と親がいる一方で、かつてのイメージから抜け出せず「とにかく銀行が一番」「地元の地銀に就職して」と勧める親もいる。こうした両極端の意見に振り回されるケースが散見されるからだ。
偏見を持たずに就職先を選ぶためにも、正しく業界の「今」を知ることが大切だろう。そこでまずは、就活生の親世代が就職活動をしていた約30年前から現在までの金融業界の状況を時系列で見ていこう。