創業家のくびきから解放された島忠
内部では家具とその他部門が関係悪く

 1890年に島村忠太郎が「島村箪笥製造所」を創業したことを起源とする島忠は、家具販売が祖業だ。その後も長く島村家が経営を率いたが、現在の岡野恭明社長はプロパーで、今では島村家の株式の持ち分比率も非常に低い。それでも島村家の末裔の元首脳が、数年前まで経営に影響力を持ち続けていたとされ、ここ最近になってようやく、創業家のくびきから解き放たれた状況だ。

 それが再び、似鳥会長のような強烈なリーダーの軍門に下ることを、島忠の社員はよしとするのだろうか。

 また、島忠にはさらに複雑な問題が存在する。非開示のため詳細は不明ながら、現在は家具よりも、家具以外の商品の方が、売上高が大きい。ただ「祖業である家具部門の方が立場は上、という認識が彼らに残っているため、家具部門とその他の部門との仲が良くない」(ホームセンター業界関係者)。

 ニトリHDもこうした事情を側聞していたのであろう、10月29日に公表した買収提案の説明資料の中で「島忠の高品質かつ当社とは異なる価格帯の家具」などと表記し、島忠の家具部門に一定の“リスペクト”を示してはいる。ほかにも、ニトリHDの物流網やEコマース、海外店舗を生かして島忠の商品の販売を拡大できるという構想を提示しており、ニトリHDは島忠側のメリットのアピールに躍起だ。

 もっとも前出の関係者は「ニトリHDの狙いは、わずか60店だが、都心に集中している店舗の土地。店舗はやがて、ニトリに塗り替えられるのではないか」との見方を示す。

 ニトリHDの白井俊之社長は11月10日に時事通信のインタビューに応じ、「両社の店舗が近くにあっても、顧客は使い分けている」と述べ、買収後でも島忠の自主性を尊重する意向を示した。また、当初は11月中旬にTOBを開始する方針だったが、「島忠にも納得いただいた上で(開始を)発表したい」と配慮を示している。

 ただ、ニトリHDの社風が一朝一夕に変わるわけではない。島忠社員の心理は今頃、大きく揺れ動いていることだろう。