料理をすることと創作することの共通点

北方:ノドグロを干物にするって、もったいないから勇気がいるわけですよ。それをあえて干物にして焼いて食うとうまいんです。

弘兼:釣った魚はご自分で料理されるんですか。

北方:もちろん。包丁は20本ぐらい持ってますよ。包丁を研ぐのが趣味なもんですから、いつも研いでるんです。

あと、日本刀も持っていましてね。釣ってきた魚を木からぶら下げて、スパーンって切るんです。そうすると血がピーって飛んで。

弘兼:居合抜きですね。

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北方:私の料理はほとんど煮込みばかり。過去に自分のことを振った女への恨み言とか、いろんな思いを煮込むわけですよ。男の料理って、だいたいそういうものでしょ? あともう1つ、男の料理といったら、女に食わせるための料理ですね。

弘兼:さすがにそこまで格好いいことは言えないですけど、私も料理は好きで、アシスタントに食べさせるものをよくつくっています。自分一人で食べるときは、カップ麺とかで全然いいんですけれど、誰かに食べさせる料理をつくるときは「こんなものを出したら喜ぶだろうな」と考えるんです。

結局、料理って作品を描くことと通じているんじゃないですか。描いたものを誰かに読んでもらって、その人が喜んでくれるとうれしくなるわけですから。

北方:そうですね。そんなわけで、最近は船に乗って、釣りをして、居合抜きをやってるから、むしろコロナ禍以前より健康的になったかもしれない。