私が実施している演習に参加した企業の例を挙げると、このような方法で上位3つの異論や懸念を解消すれば、まずは実行に移してみましょうという程度に合意ができる。その合意には、1時間もかからない。これを出されたものから議論して、最も深刻な問題が議論できないから、いくら時間があっても合意形成できないのだ。実行力の有無と許容範囲が広いこととは相関がある。
このように申し上げると、最も深刻なものからそうでないものまで議論の優先順位を付けると合意ができないという意見が出る。そこでも許容範囲が必要だ。優先順位が高い順に、第一群の異論や懸念がこれとこれ、第二群がこれとこれというように、だいたいでよい。多少の曖昧さについての許容範囲を持つことが合意形成を加速し、成果につながるのだ。
提案者の許容範囲も、解消される異論や懸念の数についての許容範囲も、異論や懸念の優先順位の許容範囲も、いずれも会議のファシリテーションの仕方のフレームワークだ。
食品の賞味期限を日単位から月単位に変えるというフレームワークの変更が、私たちの賞味期限に対する許容範囲を広げることと同じように、ビジネスにおけるフレームワークの持ち方が、ビジネスパーソンの許容範囲に影響をあたえ、ビジネスを伸展させることに役立つ。リモートワークが広く普及する中で、会議時間は短くなる傾向にある。許容範囲の広さが、パフォーマンス向上のカギといえる。