「許容範囲の狭さ」が
合意形成を阻んでいる

 許容範囲が狭いことで生じる問題の一つに、会議における合意形成の問題がある。会議を行っても、異論や懸念が噴出し、紛糾し、一定時間内に合意形成できないという状況は、誰しも経験しているのではないだろうか。

 会議の話がなぜ許容範囲の話につながるのかと、疑問に思うかもしれない。しかし、こうした時間切れになる会議を繰り返している企業では、提案者の許容範囲が狭いことが多い。この提案通りに寸分たがわず合意しなければならないと思い込んでいて、異論や懸念が出ても修正したがらないことが、さらなる異論や懸念の噴出や、その後の紛糾につながってしまう。

 もちろん、例えば生命を守る、安全を維持する、法律を遵守するなど、そのとおり実施すべき問題の場合には、許容範囲を広く持つべきではない。そしてそういうテーマを扱う場合には、トップダウンのマネジメントで指示して浸透させていけばよい。

 一方で、メンバーと合意して、メンバーを巻き込んだ上で実行したい提案の場合に、許容範囲を設けなかったり狭かったりすれば、合意できる確率が格段に低下する。「異論や懸念があればここまでは許容しよう」という範囲をある程度広めにとって、もちろん、ここから先は許容できないという点も意識しながら、合意形成していくことがお勧めだ。

許容範囲が広がれば
実行力が上がる

 合意形成の会議において、もう一つ、許容範囲が関係していることがある。全ての異論や懸念を解消しなければ実行に移せないという思い込み、つまり、解消されない問題があることを許容できないと、合意形成に時間がかかるという問題だ。

 全ての問題が解消されなくても、ある程度解消された段階で、「次回の会議まで実行してみよう」という程度に許容範囲を持つと、合意形成が格段にスムーズに進む。

 そのためには、出された異論や懸念に対して、端から端まで逐一議論するのではなく、議論する前に、最も深刻なものからそうでないものまで、異論や懸念を深刻度順に並び替えればよい。そして、最も深刻なものから順に議論するのである。