塩野義製薬のゾフルーザ

国内インフルエンザ治療薬市場は主に中外製薬、第一三共、塩野義製薬の3社の製品が競合し、そのシェアは近年目まぐるしく変化している。今シーズンはコロナ禍という新たな因子が加わり、劣勢に立つ塩野義の「ゾフルーザ」に復権説が浮上している。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)

実質初年度263億円、昨年度わずか4億円
売上高で「天国も地獄も見た」クスリ

 11月末は、例年ならばインフルエンザの流行が本格化する時期だ。

 塩野義製薬のインフル治療薬「ゾフルーザ」(錠剤、服用1回のみ)は、シーズンごとに売上高が乱高下してきた不思議な薬だ。

 数年前まで国内インフル治療薬市場の主役だったのは中外製薬の「タミフル」(カプセル、1日2回服用を5日間)と第一三共の「イナビル」(吸入タイプ、服用1回のみ)。それらとは作用機序(薬が効くメカニズム)が異なるゾフルーザが「2017~18年シーズン」の終盤に市場に登場すると、短期間では驚異的な24億円(18年3月期)を売り上げた。勢いそのままに「18~19年シーズン」はインフル治療薬市場1位の263億円(19年3月期)を売り上げた。

「19~20年シーズン」は天国から地獄に突き落とされた。耐性ウイルス(薬の効き目が低下した変異ウイルス、詳細は後述)問題が取り沙汰され、売り上げは4億円まで落ち込んだ。一方、タミフルは106億円(19年12月期、政府備蓄分込み)、イナビルは193億円(20年3月期)を売り上げた。

 完膚なきまでにやられたゾフルーザに今シーズン、コロナ禍特有の「追い風」が吹いている。