インフルエンザインフルエンザにかかった場合、“ある行動”が感染リスクを高める可能性があります Photo:PIXTA

新型肺炎に対する警戒が強まっているが、今こそ身近なインフルエンザにも注意が必要だ。もしインフルエンザにかかってしまった場合、さまざまな種類がある中でどの薬を選べばいいのか? また会社へはいつから出勤してもいいのか? 呼吸器内科医で池袋大谷クリニック院長の大谷義夫医師に話を聞いた。(聞き手/ライター 羽根田真智)

抗インフルエンザ薬は5種類
メリット・デメリットを知って選択を

──現在、インフルエンザの治療薬は5種類が承認されています。どのような基準から選べばいいのでしょうか?

大谷義夫医師大谷義夫/池袋大谷クリニック院長。1963年、東京都生まれ。1989年、群馬大学医学部卒業後、九段坂病院内科医長、東京医科歯科大学呼吸器内科医局長、同大学呼吸器内科兼任睡眠制御学講座准教授、米国ミシガン大学留学などを経て、2009年11月に池袋大谷クリニック開院。医学博士、日本呼吸器学会呼吸器専門医・指導医、日本アレルギー学会専門医・指導医、日本内科学会総合内科専門医

 医師によって薬の選び方は違うため、実のところ「この薬が一番」とは言い切れません。

 5種類の薬のうち、内服薬はタミフル(一般名<以下、同>:オセルタミビルリン酸塩)、ゾフルーザ(バロキサビルマルボキシル)の2種類。リレンザ(ザナミビル水和物)とイナビル(ラニナミビルオクタン酸エステル水和物)は吸入薬で、ラピアクタ(ペラミビル水和物)は点滴です。2016~17年に処方された薬の推計では、47%がイナビル、31%がタミフルでした。

 これらの薬の中で、昨年発売されたゾフルーザだけが作用機序が異なります。例えば入院した場合は点滴が使われるかもしれませんし、嘔吐がひどい人には内服薬が適せず、吸入薬が向いているかもしれません。高齢者で吸入薬が使いづらい人には内服薬がいいでしょう。さらに、同じ内服薬でもタミフルは1日2回5日間投与ですが、ゾフルーザは1回投与です。使いやすさを考えて、ゾフルーザを選ぶという人もいるでしょう。

 私は患者さんに薬を処方する時は、薬のメリット、デメリットを説明し、その上で選んでもらうようにしています。医師によっては、「インフルエンザは安静にしていれば治る。健康な成人には薬は出さない」という方針を持っている人もいます。まさに、薬の出し方は「医師それぞれ」なのです。

──日本小児科学会は「12歳未満の小児に対してゾフルーザの積極的な投与を推奨しない」とし、日本感染症学会も、12歳未満の小児については「慎重に投与」とする方向だと聞きました。なぜですか?

 ゾフルーザには、耐性ウイルスの問題が指摘されているためです。これは、「インフルエンザウイルスが何らかの変異を起こし、薬が十分に効かなくなった」という意味です。ゾフルーザを投与した患者さんには一定頻度で耐性ウイルスが検出され、ゾフルーザを未使用の人にも耐性ウイルスが見られたという報告があり、それが成人では率が高くないものの、小児の場合は成人より率が高いので、日本小児科学会らは「慎重投与」としているのです。