「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「読む・書く・話す」が一気にロジカルになる画期的な方法で、仕事や勉強に使える実践的なものだ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。
「柔軟な思考力」が試される慶應のユニークな小論文課題
慶應義塾大学・法学部のFIT入試(AO入試・総合型選抜の一種)では、次のような小論文課題が出題されたことがあります。
「小学五年生の女子児童に民主主義の意義を説明する文章を書きなさい」
小学校高学年なら知っていそうな知識を想像して書くでしょう。さらに「小学五年生の女子児童」と宛先が指定されていますから無視できません。その年代の女子児童のリアリティに響く具体例には何があるだろうと考えるはずです。
『ドラえもん』のしずかちゃんを想定して、「ジャイアンのような体が大きく腕力もあり、実際に実力行使もいとわない人物(のび太は通算でどれだけぶん殴られていることでしょう)が、クラスのことや学校のことをすべて自分に都合よく決めて、クラスの他のメンバーの意見なんかまったく聞こうとしないとしたら。そういうことが起こらないようにする仕組みが民主主義で……」なんて始めることもできそうです。
相手の目線に合わせて、書き方を変える
相手が変われば題材やテーマは同じでも書き方は変わります。
夏目漱石の『坊っちゃん』を小学1年生に紹介するならどう書きますか。すでに読んだことがあるかもしれない高校生に向けて紹介文を書くならどうでしょう。日本語を勉強し始めた外国人に、重篤な病気で入院中の人に……。
題材やテーマは同じでも、と書きましたが、それらのどこに焦点をあてるかには相手により変化が出てきます。コンテンツが変わるのです。
(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)