「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「読む・書く・話す」が一気にロジカルになる画期的な方法で、仕事や勉強に使える実践的なものだ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

対比思考Photo: Adobe Stock

【視点1】対極的対比──正反対にあるものに目を向ける

 日本を代表する漫画家、手塚治虫さん(1928~1989)の画業は、人間とは対極的なものを描くことを通して人間とは何かを考えさせるものであったとよく指摘されます。

 『鉄腕アトム』のアトムは人間ではありません。人工頭脳をもった機械・ロボットですね。フレンドリーで自己犠牲を厭わず社会貢献する「人間らしい」ロボットを描くことを通じて、では「人間とは何者か」を考えさせるストーリーと解釈できます。

 『ジャングル大帝』のレオは人間ではありません。百獣の王と呼ぶにふさわしい気高きライオンです。これまた献身的で動物種を超えた指導力や統率力をもつ、ある種「人間的」なレオを描くことで、では「人間とは何者か」を考えさせる物語と解釈することができます。

 『火の鳥』は不死がテーマで、これに対する有限な人間の業と有限ゆえの幸福や価値を描いています。松本零士の『銀河鉄道999』も機械の体と永遠の命を、生身の有限な人間に対置させています。

 映画『シン・ゴジラ』(庵野秀明監督 2016年)はゴジラを対置することで現代の日本や日本政府の危機管理能力を浮かび上がらせたと見ることができます。

 架空の破壊神ゴジラを一方に配置したからこそかえってリアルになる日本政治の問題があります。リアリズムに徹して国会中継をひたすら放送するだけではわからないことが逆に浮かび上がる効果があります。水木しげるは人間に妖怪を対置し、諌山創は巨人を対置しました。

 何と何を対置させているのかを考えると見えてくるものがあります。