欧米で初の承認を受けた新型コロナウイルスワクチンの始まりは、ドイツの地方で若い2人の医師が新たながん治療を開発すると誓いを立てた30年前にさかのぼる。トルコ移民の両親を持つ2人は、恋に落ちたばかりだった。ドイツのバイオテクノロジー企業ビオンテックと米国のファイザーは10カ月かけてワクチンを共同開発した。2日に英国で緊急使用の承認を受け、これまでのワクチン開発の最短記録を3年以上も縮めることとなった。だが、ビオンテックを創業したウグル・サヒン博士と妻のオズレム・トゥレシ博士にとってそれは、昨年冬に新型コロナ感染が広がるずっと前に始まった30年間に及ぶ努力の成果だった。感染が広がる以前、サヒン氏は長年にわたりメッセンジャーRNA(mRNA)を研究していた。mRNAは人体に投与することで、ウイルスなどの脅威に対する防御を促す。サヒン氏は1月、欧州で初の感染患者が確認される何日も前に、この知識を使って自宅のコンピューターでワクチンの一種を設計した。