成功する投資家は何を見ているのか?

多くの個人投資家は「株価」の値動きに一喜一憂するが、大きな資産を築く個人投資家は「株価」ではなく「時価総額」、もっというと「世の中」全体を見わたして投資している。
株は過去にいくら値上がりしていても、買ってから値上がりしなければ、利益は得られない。大事なのは「過去」より「今」、「今」よりも「近未来」を見つめて、「人の需要の動き」を見ることだ。
人の商品やサービスに対する需要の動きが企業の業績に影響を与え、株価が変動する。同じように投資家の需要(売り買い)の動きが株価に影響を与え、値動きする。いずれにしても「世の中」「人の需要の動き」を広く見渡すことで、近未来のトレンドが読めてくるのだ。
大きな資産を築いた個人投資家は、どのように世の中を見て、投資先を見極めているのか?
投資家の間で話題となっている『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円【実践バイブル】』の著者・遠藤洋さんに、世の中を見て投資先を見極める方法について詳しく聞いた。
(取材・構成 イイダテツヤ/撮影・疋田千里)

日頃のちょっとした情報から
成長しそうな会社が見つかる

――『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円【実践バイブル】』では、文字通り「小型株」に「集中投資」することのメリットを語っています。とはいえ、集中投資すべき会社を見つけるのは、なかなか難しいと思うのですが、遠藤さんはどのように投資する会社を選んでいるのでしょうか?

 私がよく言っているのは、「株で利益を得ようと思ったら、株価を見ていちゃいけない」ということです。じゃあ、何を見るのかと言えば「時価総額」なのですが、もっと言うと「世の中を見る」ということだと思っているんです。

 もう少し噛み砕いて言うなら、「人の需要の動き」を見ます。

 今、世の中では「どんな商品やサービスが求められているのか」「“みんなの欲しい”はどこに向いているのか」ということは常に意識しています。

――そういう情報は、具体的にどういうところから得ているんですか?

 たとえば、街を歩いていて「あそこの店に行列ができているな」と気づくこともありますし、電車に乗っていて近くの乗客が「最近、こんなもの買ったんだよね」という話をしていれば、そこに需要の動きを感じることもあります。

 もちろんネットのニュースや新聞記事も見ますけど、私が一番大事にしているのは、「自分の目で見て、耳で聞いた一次情報」なんです。

 ニュースになって、話題になっているときには、すでにもうピークに達している可能性も高くなります。そうなる前にも、世の中にはいろんな「需要の動き」というか、予兆が溢れています。そういうところをキャッチするアンテナを立て置くことが重要です。

 以前、スマホゲーム「パズル&ドラゴンズ」(パズドラ)が一時、すごく流行ったのですが、私が電車に乗っていたら、たまたま両隣に座った2人がスマホゲームをしていたんです。

「何をやってるんだろう……」とチラ見したら、その2人ともパズドラをしていたんです。パズドラを提供しているガンホー・オンライン・エンターテイメントの株価は1年半で70倍になりました。

 私もガンホーに集中投資して、70倍とまではいきませんが、大きな利益を得ることができました。

成功する投資家は何を見ているのか?遠藤洋(えんどう ひろし)
投資家・自由人
1987年埼玉県生まれ。東京理科大学理工学部電気電子情報工学科在学中の夏休み、なにか新しいことをやってみようと、家庭教師のアルバイトで貯めたお金を元手に知識ゼロの状態から投資をはじめる。すると、有名企業の株より小型株、分散投資より集中投資のほうが実は低リスク・高リターンであることを実体験。大学卒業後、ベンチャー企業に入社するも、投資で得た資金を元手に26歳で独立。本質的な価値を見極め「1年以内に株価3倍以上になる小型株」へ集中投資するスタイルで、最大年間利まわり+600%、1銘柄の最大投資益+1200%など、1銘柄だけでも億単位のリターンを達成。噂を聞きつけた資産家から「10億円を預けるから資産運用して欲しい」と頼まれたこともあるが、いまのところ外部運用はすべて断り、自己資金のみで運用している。その投資経験をベースに、経営者、上場企業役員、医者、弁護士、ビジネスパーソンなど、これまで1500人以上の個人投資家を指導し「勝てる投資家」を数多く輩出。現在は投資しながら1年のうち半分は国内外を旅して自由を謳歌しつつ、次世代を担う投資家や事業の育成に力を入れている。前著『10万円から始める! 小型株集中投資で1億円』がベストセラーに。

――普段からアンテナを立てていると、世の中のニーズを少しずつ気づくようになる。すると、ネットや新聞でみんなが広く知る前に、種となる情報をキャッチできる。そこから、きちんと調べて投資するかしないかを見極めれば、大きなチャンスを得られるということなんですね。

 そうだと思います。もちろん、毎回そういうふうに投資するわけではなく、投資先を見つけるには、他にもさまざまな方法があります。

 いずれにしても大事なのは、株価だけではなく「世の中を見ること」だと思います。

 どんな人でも、自分の仕事の業界や趣味の領域で得られるトレンドとか、動きってあると思うんです。ゲーム会社で働いている人ならゲーム、マラソンが趣味の人ならスポーツの領域のトレンドを、興味を持って得やすいでしょう。

 もちろん、勤務先の内部情報を利用して利益を得たりするインサイダー取引は犯罪にあたりますが、一般的な情報で自分の仕事や趣味にかかわることなら、興味がわきやすいし、勉強にもなります。

 日頃の雑談でも話題が豊富になったり、仕事にも役立ったりと、いろんな面で相乗効果をもたらしますし、やってみるとわかりますが、けっこう楽しみながら情報を得られるんです。

「今、こんな商品が話題になり始めている」「新しいサービスが出てきて、業界内では使っている人が増えてきている」なんて種が見つかるはずです。そんなところに「成長しそうな会社」があるのです。