成功する投資家が教える
株価指標より大切なこと

――身近なところから成長企業を見つけるという方法を、もうちょっと具体的に教えていただけますか。

 たとえば、出版社の人と話をすると「紙の本が売れなくなってきている」という話はよく聞くんです。でも「本を読みたい」「知識を得たい」という需要そのものがなくなるわけではないんですよ。

 仮に紙の本は売れなくなったとしても、その需要はどこかに移っているはず。電子書籍かもしれませんし、オンラインの記事かもしれません。あるいは、オンラインのセミナーや講座かもしれません。

 そういう俯瞰した目線で、いろいろ見ていると、思わぬところで業績を伸ばしている小型株があったりするものです。

 コロナ禍で「家にいる時間が増えた」としたら、「いったい人は何を求めているだろう」と考えて、世の中を眺めてみるんです。

 ネット動画を観る人が増えたり、ネット通販で注文する人が増えたり、在宅勤務でパソコンの需要が増えたり、自宅で快適に過ごすことにお金を使う人が増えているということもありますよね。

 すると、インターネット・PC関連企業の業績が向上したり、自宅で料理する人が増えれば調理器具が売れたり料理系サイトが人気になったり、お掃除グッズや家具が売れるなど、さまざまな可能性が見えてきます。

 そういう意味では、出版業界は情報の最前線にいると思います。「売れている本」って、そのまま「今、人々の知りたいこと」ですから。

 いずれにしても、株式投資で資産を増やすためには「世の中を見る」こと。それが一番大事ですし、意識して見ていると、すごくおもしろいものですよ。

成功する投資家は<br />何を見ているのか?

――株式投資の世界では株の割安・割高の目安として「PER」(株価収益率)や「PBR」(株価純資産倍率)などの指標がありますが、こうした指標はどう活用すればいいのでしょうか。

 PERやPBRは、株式投資に関連する代表的な指標ですが、そうした指標は万能ではありません。あくまで1つの目安にすぎない。

「今の利益」や「今、その会社が持っている資産」をもとに計算された指標ですから、「今、割高」「今、割安」ということはわかるかもしれません。

 しかし、私たち投資家が本当に見なければいけないのは、「今」ではなく「近未来」なんです。

 そう考えると、「今」の利益や資産を基準に計算しているPERやPBRは、じつは1ミリも役に立たないのです。株価指標を絶対視するような投資家もいますが、市場は刻々と変わるし、ビジネスもルールも変わってきますからね。

社長が「大株主」であることが
投資先の必須条件

――「この会社は、よさそうだ」と思えるところを見つけたら、その先はどんな情報から「買う」「買わない」を判断していくのですか。

 ひと言でいうなら、ありとあらゆる情報を自分からとりに行きます。

 もちろん、ネットのIR(投資家向け広報)情報から決算書などの数字は見ますけど、数字だけではわからないことってたくさんあります。経営者の考え方とか人格は、数字からは見えてきませんからね。

 その会社のホームページにアクセスして、社長の思いや従業員のインタビューが載っていれば、それを読みます。上場企業であれば、いろんなメディアで社長のインタビュー記事が載っていたり、決算説明会の動画がアップされていたりします。

 その話し方であったり質問の答え方も見ますし、そういうところから経営者の人柄や会社に対する思い、商品・サービスについての話など、いろんなことがわかってきます。

 株主総会に出席したり、場合によっては直接会って話を聞くこともあります。

――そこまでやるとは、正直想像していなかったです。

 私は「小型株」「これから大きく成長していくベンチャー企業」を中心に集中投資しましょう、という話をいつもしています。

 集中投資をするからには、やはりそのくらい徹底して「この会社は本当にいいのか」「本気で応援できるのか」「成長するのか」というところを調べ抜く必要があります。

 そうでなければ、「この会社に集中して投資する」という気持ちになれないじゃないですか。

 小型株のベンチャー企業は、創業社長が大株主でもあり、大きな影響力をもって経営の陣頭指揮をとるケースが多いので、社長のことは特に意識して見ていますね。

成功する投資家は<br />何を見ているのか?

――具体的に、社長のどのような部分を見ているんでしょうか?

 社長がどんな人なのか、どんな考えを持っているのか、どんな未来を見ているのかは、すごくこだわって見ています。

 その社長が見ている会社の未来像に共感できるか、というのは非常に大事な要素です。そこに共感できなければ、やっぱり「本気で応援しよう」とは思わないですからね。

 そして、口だけでなく、ちゃんと事業として動かせているか。そこも非常に大事です。口では立派なことを言っていても、実行できていなかったり、事業としてきちんと稼働していなければ、やっぱり自分のお金を預ける投資先にはなりません。

 それと社長自身が大株主か。ここを重要視しています。

 社長が大株主であれば、株主利益を向上させるという点で私たち投資家と利害関係が一致します。

 社長が自社株を持っていない会社は、それだけで私は投資対象外にします。

 自社株を持っている創業社長と、いわゆるサラリーマン社長では、考え方から行動までかなり違ってきますからね。

 サラリーマン社長は「いかに自分の給料を得るか」「いかに滞りなく過ごして、満額の退職金をもらうか」を考えている人も多いですから。

 そういう意味で、自社株を大量保有している社長は、私たち投資家と利害が一致するわけです。ある種、社長が一番大きな投資家というか。

 この点は、ものすごく大事ですね。

――会社のこと、社長のことを含めて、徹底的にその会社について調べ、確認するからこその集中投資なんですね。

 本当にそうです。だからこそ、そんなにたくさんの銘柄は持てず、自ずと集中投資になるんですね。でも、そうやって真剣に調べて、「本当に応援したい会社」を見つけて、自分のお金を預けることが、投資の本質だと私は思っています。

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成功する投資家は<br />何を見ているのか?