「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「社会で通用する論理的な思考」が身につく画期的な1冊と話題だ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

対比思考Photo: Adobe Stock

物事を反対から見るためには「発想のメガネ」が必要だ

 視野を広げ、柔軟な発想をするためには、「視点を切りかえて、物事を反対から見ることが大切だ」とよく言われます。しかし「物事を反対から見る」といっても、実践的にはどうすれば視点を切りかえることができるでしょうか?

 そこで「対比的な学問用語」が強力な味方になってくれます。中でも「リバタリアニズム」と「パターナリズム」は、人間の振る舞いについて考えるときの「2大対比キーワード」と言えるものです。本書でこれらの用語を取り上げる理由は、日常生活でもビジネスでも驚くほど新鮮な視点を提供してくれるからです。

「リバタリアニズム」とは、他人に危害を加えない限り、何をしてもよいという徹底した自由主義の考え方です。自己への危害ならば自由の範囲内です。

 一方、「パターナリズム」は、相手(他者)にとってよいことは強制し、相手にとってよくないことは強制的にやめさせる考え方です。

 どっちに与するかということではなく、物事を考える方法論として知っておきましょう。

日本では「ヘルメット」、ハワイでは「サングラス」

 私の友人の一人はよくハワイに出かけます。その彼が教えてくれたところによるとハワイ州ではオートバイに乗るとき、日本と違ってヘルメット着用は義務ではないそうです。一方、サングラスの着用は義務です。

 なぜ日本とハワイでルールが違うのでしょうか。「サングラス着用義務」をどう解釈したらよいのでしょうか。

 パターナリズムの反対です。そうです、リバタリアニズムの発想ですね。日本の「ヘルメット着用義務」がパターナリズムの発想だと気づけば、ハワイ州のルールは、リバタリアニズムの発想ということがわかります。

「自分の身を守るためにヘルメットを被るかどうかは自分で判断してくださいね。でもハワイの日差しは強くてまぶしい。自分の意思とは関係なく、目がくらんで人をはねるなど、他人への危害を加えないようにしっかりサングラスはしなさい」というメッセージだと、私は理解しています。

 国や地域によって道路交通法も違う。これは発想が違うのです。

 これを「ところ変われば品変わる」とか「郷に入っては郷に従え」で済まさないようにしたいですね。もちろん、ただ珍しいこともあるものだ、でも済まさない。リバタリアニズムの視点かパターナリズムの視点かによって、これほどの差異があると知り、これを方法論として日常・ビジネス・学業に応用し、発想を広げる見本としましょう。

(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)