「ややこしい話をシンプルに説明する人」や「瞬時に自分の意見を出す人」を見ると、多くの人が「この人は頭がいい」と感心する。なぜ「頭のいい人」は、いつでも「スジの良い意見」や「わかりやすい説明」ができるのだろうか。
会員数100万人超の「スタディサプリ」で絶大な人気を誇るNo1現代文・小論文講師が、早く正確に文章を読み、シンプルでわかりやすい説明ができる頭の使い方を『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』にまとめた。学生から大人まで「読む・書く・話す」が一気にロジカルになる画期的な方法で、仕事や勉強に使える実践的なものだ。本稿では、特別に本書から一部を抜粋・編集して紹介する。

対比思考Photo: Adobe Stock

同じ物事を見て、「人とは違うこと」が言える人の思考プロセス

 学問は“メガネ”にたとえられることがあります。学識があれば、“それ”を通して見えるものがあるということです。学問上の知識があると、クイズ番組で勝てるということが重要なのではありません。

 私自身、テレビ番組の『パネルクイズアタック25』を見て、つい出演者たちより早くこたえようと夢中になってしまいますが……本書はクイズ対策用の「雑学」の本ではありません。クイズは楽しいですが、ビジネスの現場でも学問の現場でも「1つの正答があらかじめ用意されている」ということは、あまりありませんから。むしろ学識があると同じ物事を見ても違う風景が見えるということが肝心です。

 大きなターミナル駅の駅前にて、同じ人波の風景を見ても、それぞれの学知によって見えているものが違うはずです。

 例えば、都市設計や建築学の“メガネ”で見えるものは、「人の流れがスムーズか」「道の幅や駅ビルの出入り口の場所や数は適切か」。経営学の“メガネ”で見えるものは、「地価はいかほどか」「どこにどんなビジネスチャンスがあるか」。

 犯罪心理学の“メガネ”で見えるものは、「どこに犯罪者が好む死角がありそうか」。歴史の“メガネ”で見えるものは、「江戸時代の古地図と照らし合わせて、この町がなぜこのような発展の仕方をしたのか」。病理学の“メガネ”で見えるものは、「感染症拡大の契機になってしまうところはどこか」。

 とくに人文社会科学では、学術用語が“それ”なしには見えなかったものを見えるようにしてくれる“メガネ”になってくれます。

 本書の後半では「リバタリアニズムとパターナリズム」というさまざまな学問分野にまたがる2大対比キーワードに注目します。

 本書でそれらを取り上げる理由は、そうした用語が専門の学問分野において有効であるのみならず、日常生活でもビジネスでも驚くほど新鮮な視点を提供してくれるからです。つまり対比的学問用語が柔軟なアイディア発想の味方になってくれるのです。

(本原稿は、『対比思考──最もシンプルで万能な頭の使い方』からの抜粋・編集したものです)