組織で“天才”と言われる?
6つのタイプとは
1.先進領域からの越境者
経済学を学んだ人なら聞いたことのあるサムエルソン。数学の熟達者が物理学的パラダイムに基づいて近代経済学を作り出した。より先に進んだ学問領域の知恵を、未発達の社会経済活動の記述に活用したのである。
たとえば、現在、先端IT企業でデータアナリシスをやっている人が、消費材企業にある購買データを縦横無尽に分析する機会に恵まれれば、その会社では天才の名をほしいままにできるかもしれない。在庫管理や部門別会計などの管理の方法やマーケティングを熟知した人材が、それらが遅れている会社で働けば神のごとくあがめられることにもなる。われわれも100年前にタイムスリップすれば、天才と言われるかもしれない……。
2.異分野からの越境者
異分野からの参入者が、ときに大きな革新を起こすことで、天才として遇されることもある。言ってみればよそ者である。オンライン出版ソフトやインターネット決済システムなどのIT領域のプロフェッショナルであるイーロン・マスクが、電気自動車分野に参入して作ったテスラの電気自動車は、“車輪がついたコンピュータ”だといえる。既存の自動車産業とは異なるパラダイムを持ち込み、クルマの概念を変えたのだ。
スティーブ・ジョブズのiPhoneは、携帯電話の概念を大きく変えた。規模感は異なるが、雑誌編集者である岩佐十良さんが造ったリアルメディア(体験の編集)としての里山十帖、そして箱根本箱は、旅館の概念を大きく変えた。このような異業種からの参入により、その領域の常識を超えた革新を起こし、成功を収めるとその人は天才と呼ばれる。
3.異常な執着を持つ人
要はオタクの持つエネルギーをビジネスに生かす人である。年商30億円の地方企業を10年あまりで圧倒的な業界ナンバーワンに育てた、“豆腐業界の革命児” 相模屋食料の鳥越淳司社長は、はっきり言って、“豆腐オタク”でもある。いつもどんな豆腐がこれから求められるか、どうすればもっとおいしい豆腐がつくれるか、どういう形で提案すれば受け入れられるか、を異常な執念で考え続け試行し続けている。成功の裏には数限りない挑戦があり、成功だけ見れば天才だが、失敗まで見れば“異常な豆腐好き”というほうが正しいだろう。
同様に特定分野に執着する研究者や技能者も、長年の苦労によって培われた知的蓄積の上に何らかの幸運が降りかかると、ノーベル賞受賞者のように突然スターに変わる可能性がある。