“天才”を生かす組織は
どうあるべきなのか
“天才”たちは、いま組織でどのように扱われているか。
1と2については、その組織の標準とは別の思考フレーム、行動パターンを持っている人である。組織に同質化させてしまっては元も子もない。しかしながら、一般的な組織では、異質な文化を持ち込むことは非常に難しいことでもある。例えば、前の会社の事例を声高に語る人は嫌われてしまう。「前の会社では○○でした」などは禁句である。
受け入れる側の組織が考え方を変えて、外部領域から来た人には必ず別の領域、前の会社ではどうしていたかを語らせるよう義務づけ、それを積極的に活用することで、ブレークスルーが期待できるだろう。
なかでも、特に優れた人には、最低限守ってもらいたいことだけを提示して自由にやってもらうのがよいだろう。別枠扱いをしなくてはならないのだ。しかしながら、現場の長はこのような人だけが特別扱いされることが、組織の調和を乱し、他の人のやる気をそぐと信じている。そして自分も面白くないから、いじわるをしてしまい、やがて追い出しにかかる。そんなこんなで1や2のタイプの人は、いつのまにか組織からいなくなってしまうわけだが、そろそろそういう子どもじみた振る舞いからは卒業すべきだ。他人の持つ別領域の進んだ知恵は活用し倒すほうが自分も得である。
3については、現在の労働関係法の世界では対処が難しい。脳漿(のうしょう)を絞るほど考え抜き、試行し続けるようなことは“労働”の世界では想定されていないからである。このような人は通常の従業員ではなく、プロフェッショナルとして別枠の契約をするしかないのかもしれない。
しかしこういう人は、思考も行動も一人だけ別世界に行ってしまうから、協調性がないと認識され、うまく会社の業務と接続できない可能性がある。ゆえに、組織と個人のエネルギーの間をつなぐ調整者が必要となるだろう。
4については、受益者側、つまり顧客やユーザー側の立場や気持ちを誰よりも分かりやすく供給者側に理解してもらうコミュニケーションやその理由付けを行う能力が必要となる。話としては分かるが、そんなことを実現するのは無理だ、と反発されても、それに動じない強いハートも必要となるが、そこには受益者の立場や気持ちを自分が代表できると思えるだけの自信と裏付けが必要となろう。