「VUCA」と呼ばれる現代は、変化が多く、不確実性の高い曖昧な時代。とりわけ今年は新型コロナウイルスの感染拡大により、先を見通すことがいまだかつてなく困難になった。そのような状況で、これから就職活動を控えている学生たちの中には、どのようなマインドセットを持って、どのような基準で仕事選びをすればいいのか途方に暮れている人もいるかもしれない。
そんな先行き不透明な時代における行動指針として話題になった、8万部を超えるベストセラー『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』の著者・山口周さんが三井住友銀行人事部の高瀬雄大さん、矢野遼介さんと行ったトークセッションで、企業が求める人物像について語った内容をダイジェスト版としてお届けする。(後編)
前編:【山口周】就活で勝ち残るのは、「正解」よりも問題を「発見」できる人
メガバンクが変われば日本も変わる?
――矢野さんは、就職活動のときに思い描いていた「なりたい姿」に近づいているという感覚はありますか?
三井住友銀行人事部採用グループ部長代理
矢野遼介(以下、矢野):私は入行7年目ですが、自分のなりたい姿に少し近づいたと感じています。私は就職活動時、先輩から「日本を変えようぜ」と言われたのがきっかけで「SMBCに入ろう」と即断しましたが、2.8万人の従業員を抱えるSMBCが本気で舵を切れば日本へも大きな影響を与えられると実感しているからです。
些細なことではありますが、SMBCが導入したドレスコードフリーは、同業でその後同様に導入するケースが発生したので、銀行の「お堅い」イメージを全国規模で変えられたのではないでしょうか。私自身も、新卒採用はもちろんのこと、人事部内でグループ横断的に取り組んでいる従業員のエンゲージメント向上のための各種企画など、SMBCを変えられるようなチャレンジに携わることができ、日々奔走しています。
慎重に行動するより「まずやってみる」ことが成長につながる
山口周(以下、山口):これからの時代は、旧来の定石や勝ちパターンが通用しなくなる領域がたくさん出てくるので、慎重に行動していては先を越されてしまいます。
ビジネスの世界では「ファーストムーバーアドバンテージ」といって、先にトライした人が利益を得やすいとされています。今後はリスクをコントロールして最小化しながら、動き出しを早くすることで、うまくいくかどうかの判断を先行してやらなければなりません。
その代表例がAmazonです。Amazonは1997年に上場してからこれまでに少なくとも70個の新規事業に着手しましたが、その3分の1は1年で撤退しています。ジェフ・ベゾス肝いりのスマホ事業は、全く売れなかったので半年で撤退しました。
現代は個人にとっても組織にとっても「まずやってみる」ことのコストはどんどん低下しているので、まず試してみるべきです。うまくいきそうであればさらに深入りして、厳しければ引っ込めることを繰り返すことで自然淘汰が起きて、よりよいビジネスへと成長していくはずです。
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『ニュータイプの時代』『知的戦闘力を高める 独学の技法』(以上、ダイヤモンド社)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)など。