現在、7万部のベストセラーとなっている山口周氏の最新刊『ニュータイプの時代――新時代を生き抜く24の思考・行動様式』。その中で山口氏は、モノがあふれ、ソリューションが過剰になった現在においては、もはや理性やサイエンスに基づいた「課題の解決」が価値を持たなくなり、代わりに感性とアートに基づいた「課題の発見」が大きな価値を生むようになったと語る。
そうした時代の変化の中で、コンサルタント、広告プランナー、弁護士……といった高学歴エリートに人気の「理性×サイエンス」の職業はどうなっていくのか?(構成:松隈勝之)

この記事は、大企業、NPO法人を中心に有志の経営者や次世代リーダーが集うクローズドのコミュニティー新G研(新グループ経営改革推進研究会、運営:ファインド・シー)の7月19日の定例会にてなされた講演を再構成したものです。

サイエンス側の人間がパワーを持ちすぎている

山口周さん(以下、山口):上手くいく会社と、いかない会社。その差は何なのか。今日お集まりいただいている企業の経営層の皆さんは、常にその差を考えていらっしゃると思いますが、はっきり言えるのは意思決定です。ジャッジメントが優れていると、会社はどんどんよくなっていくし、ジャッジメントがまずいと、どんどんダメになる。意思決定のクオリティが、絶対的に重要だということです。

では何を意思決定するかというと、「真なるもの、正しいことは何か」「善いことは何か」「美しいことは何か」という「真、善、美」の3要素からなります。

それぞれを判断するときに、理性やサイエンスで考えるという頭の使い方と、感性やアートで考えるという2つの軸足があるのですが、感性で判断する人と、理性で判断する人が戦うと、だいたい感性で判断する人が負けてしまいます。そうすると、組織の中でパワーを持つ人はみんな理性、サイエンス側の人ということになります。

たとえば、理性やサイエンスに基づいて「何が正しいのか」を判断する代表的な職業がコンサルタント。いわゆる戦略コンサルティングファームです。データやロジック、分析によって、何が正しいのかを顧客に提案する。

「善いことは何か」でいうと、理性やサイエンスに基づいて何が許されて、何が許されないのかというのを判断して、それを顧客にアドバイスしているのが弁護士です。

そして、理性やサイエンスに基づいて、「何が美しいのか」「何が顧客に受けるのか」ということを、市場調査を分析して、顧客に提案しているのが、広告代理店ということになります。

このように戦略コンサルティングファーム、弁護士事務所、広告代理店というように、いわゆる偏差値の高い人たちが手っ取り早く高給を取ろうと思って真っ先に考えるのが、理性やサイエンスを軸にした領域の会社なのです。

そのような状況のなかで、今私が考えているのは、理性やサイエンスの対極にある、感性やアートといったことを軸にした人たちの側に、パワーバランスを引き戻していかなければならないということ。今のままでは、社会も組織も非常におかしなことになるのではと危機感を覚えます。