ついに、巨艦・ゆうちょ銀行が地方銀行の再編に乗り出す。経営共創基盤が設立する地方創生ファンドの「日本共創プラットフォーム」が、ゆうちょ銀を中心とする金融機関に出資を募り、地銀を含む地方の中堅・中小企業に資金を投入する。本稿では、当ファンドの規模や役員体制など、その具体的な中身を詳報する。(ダイヤモンド編集部 新井美江子、田上貴大)
不正引き出しの“みそぎ”を経て再始動
ゆうちょファンドはSBIの対抗軸になれるか
ついに、巨艦・ゆうちょ銀行が地方銀行の再編に乗り出す。
主体となるのは、経営共創基盤が設立する地方創生ファンドの「日本共創プラットフォーム」だ。ファンドの規模は既報の『ゆうちょ銀軸「地銀再生2000億円ファンド」構想、出資先候補4行とは?』執筆時の構想段階からぐっと縮まり、当面は総額1000億円規模となる。
日本共創プラットフォームは経営共創基盤が100%議決権を握るものの、金融機関を中心に出資を募って資金調達を行う。出資の主軸はゆうちょ銀になるもようだ。
その他の株主としては三井住友信託銀行に加えて、群馬銀行、埼玉りそな銀行、伊予銀行、山口フィナンシャルグループといった地域の有力地銀、政府系金融機関として商工組合中央金庫、そして金融機関以外ではKDDIが名乗りを上げているとみられる。大手商社や大手不動産ディベロッパーも候補に上がっていたとされるが、現状は「幻の出資者」で終わっているようだ。
各社の具体的な出資額は明らかでないが、地銀関係者の間では「1000億円のうち、ゆうちょ銀は約500億円を出資するといわれている」(地銀幹部)。
ファンド構想の発端は、地方企業を対象とした再生ファンドの必要性を、経営共創基盤グループ会長の冨山和彦氏が説いたことにある。そのため、ファンドの建て付けは、あくまでも「人口減少や市場の先細りで経営に行き詰まる地方の中堅・中小企業への資金投入」を目的としたものになる。
ただし、この「経営に行き詰まる中堅・中小企業」に地銀を含めることで、実質的に地銀再編の推進も図っていく形だ。
今回のファンドは、9月にゆうちょ銀で発覚した貯金の不正引き出し問題で「一時議論がストップしていた」(地銀幹部)。だが、11月に日本郵政が監督官庁である総務省にグループガバナンスの確実な実施について報告し、“みそぎ”を済ませたこともあって実現に至ったとみられる。25日にも正式発表となる予定だ。
日本共創プラットフォームは地銀の敵か味方か――。ファンド設立の情報をキャッチした地銀関係者を起点にして、地銀界がにわかにざわつき始めている。