地銀再編の鍵を握ると目されるのが、「第4のメガバンク構想」を掲げるSBIホールディングスだ。菅政権との距離も近く、その動向に注目が集まっている。特集『銀行再編の黒幕』(全16回)の#4は、SBIの狙いに焦点を当てた。(ダイヤモンド編集部 重石岳史)
最大10行の地銀と資本提携へ
異彩放つ北尾SBIの“劇薬”
「島根銀行は上半期で大幅な業績改善を達成した。これをV字回復と言わずして何と言うのか」──。
10月28日に都内で開かれたSBIホールディングス(以下、SBI)の決算発表。会場はいつものごとく、2時間近くにわたって話し続けた北尾吉孝社長の独壇場と化した。
北尾氏が強調したのは、SBIが出資する地方銀行の収益改善ぶりだ。9月までに資本業務提携した地銀は、島根銀、福島銀行、筑邦銀行(福岡県)、清水銀行(静岡県)の4行に上る。
このうち最初の2019年9月に資本業務提携を結んだ島根銀は、上半期のコア業務純益で4期ぶりの黒字を達成。純資産に対する株価の水準を示す株価純資産倍率(PBR)は、昨年9月末時点の0.21倍から今年9月末に0.43倍に改善した。
これについて北尾氏は「こんな短期間にPBRが増えた銀行なんてどこにもない。これはSBIなら島根銀を変えられると投資家が評価しているから。僕はいつも部下に言っているが、結果を見せてナンボの世界。やると言ったことは必ずやる。有言実行がわれわれの基本精神だ」と上機嫌に胸を張ってみせた。
次ページに示した通り、SBIの出資先地銀は、いずれも収益力などのワーストランキング上位の常連行だ。
「低位からのスタートでもともとアップサイドの余地が大きい弱小地銀ばかり」(銀行アナリスト)との声も聞かれるが、短期間で北尾氏が言うところの「結果」を出したのは間違いない。青息吐息だった地銀の業績を急回復させる秘策はどこにあるのか。