2006年に“ロングテール”、09年に“フリー”というITブームを牽引するコンセプトを作った米国の評論家クリス・アンダーソンが、今週米国で“メイカーズ”(Makers: The New Industrial Revolution)という新しい著書を刊行しました。
そのエッセンスは、かつてデジタルとネットはマスメディアとコンテンツ産業を“民主化”し、誰でも情報/コンテンツの制作と発信を行えるようにしたが、今やデジタルとネットはものづくりのプロセスを変革しつつあり、これからは製造業が“民主化”される、というものです。
同氏の新著のタイトルは、かつての“ロングテール”や“フリー”のように新たなネットブームを作り出せるでしょうか。
製造業のIT/ネット化
もちろん、確かに同氏が主張するように、ものづくりのプロセスがIT/ネットによって大きく変革されつつあることは事実です。
その典型例は3D(三次元)プリンタではないでしょうか。今や欧米では、補聴器などのマイナーな商品のみならず、航空機や自動車の部品まで3Dプリンタで“プリントアウト”して実用化されていますし、22口径の拳銃を3Dプリンタで作ってしまった強者まで現れています。
この3Dプリンタも安いものは1000ドルを切るようになりました。それ以外にもコンピューターで制御できるレーザー・カッターなど、実際にモノを作る生産の面にはデジタルの波が押し寄せ、高機能化と価格低下が進んでいます。グローバル化の恩恵で、設計図を送れば少量でも安価に生産してくれる中国のたくさんの工場も利用可能となりました。
それに加え、モノの設計の面では、CADソフトが更に進化して使いやすくなっているのみならず、クラウドソーシングの恩恵でネット上には、自分で設計しなくても様々なモノのCADファイルが無償で公開されているし、またデザインや技術についてアドバイスをもらい議論できる場もたくさんあります。