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米国、中国、インド、欧州、東南アジア、そして日本――世界を代表する50社超の新興企業と、その革新を支える「技術」「ビジネスモデル」を網羅した決定版として話題の、『スタートアップとテクノロジーの世界地図』
今回は同書より、インドを日本超えるデータ大国にした2つのインフラと、それらを作った2人の富豪を紹介する。

インドをテータ大国にした2人の富豪

 現インド首相のナレンドラ・モディは2016年から「スタートアップ・インディア」というキャンペーンをスタートした。スタートアップの起業を後押しするこのキャンペーンでは、インド政府が2000億~3000億円の予算を確保してベンチャーファンドに10億~20億円ずつ投資をするという施策を展開している。エンジェル投資を加速させるような税制改革も進行中だ。

 このインド、実は政治面のみならず、テクノロジーの面でも他国と比べて強みを持っている。

 その1つが、モディ政権以前の2008年にスタートしたAadhaar(アドハー)だ。データの時代においてとても示唆に富んだシステムといえる。これは日本のマイナンバーにあたるもので、Aadhaarには、「ファウンデーション」すなわち「基礎」や「土台」の意味がある。識別番号だけでなく、指紋や虹彩といった生体情報や顔写真の情報が照合可能な情報として登録されており、本人確認や生体認証に用いることが可能だ。

 インド人口の99%以上がアドハーへの登録を済ませていると言われる(2017年時点)。アドハーの番号があれば銀行口座を簡単に作れたり、携帯電話のSIMカードが取得できるなどのメリットがある。一方、これがないと各種公的な手当をもらえず、保険にも入れない。登録は義務ではないが、実質的に登録しないと生活が困難という状況だ。

 この世界最大級のマイナンバーシステムは、インドIT大手インフォシスの創業メンバーであり、2代目CEOのナンダン・ニレカニが推進責任者となって10年以上前に作り上げられた。

 特筆すべき点は、アドハーがさまざまなAPI(アプリケーションプラットフォームインターフェース、他のシステムとのつなぎ込みをするための仕組み)を公開しているという点だ。アドハーの情報を使って本人確認のうえ決済をするというような、各種新規システムに使うことができる。

 これが今、フィンテックの苗床になっている。アドハーをベースにして、新しいペイメントやスコアリングの仕組みが整いつつあるのだ。一方ではプライバシーの侵害にあたるという声もあるが、非常に優れた仕組みということができるだろう。

 もう1つの大きなインパクトは、リライアンス・ジオ・インフォコムによる世界最安値の4G網だ。インド一の資産家であるムケシュ・アンバニが、約2兆円を投じて安価に使える4G通信サービスの提供を2016年に開始したのだ。

 現在ユーザー数は3億5000万人で、インド第1位の通信会社に成長した。この安価な4G網のおかげで、すそ野までモバイルインターネットが普及した。都市部や若い人にだけでなく、田舎の高齢者にまで行きわたったことで、ありとあらゆるデータが取得できる状況だ。

 ほぼ全国民が保有しているユニークIDと、世界最安値4G網の整備が、インドを隠れたデータ大国たらしめている。次の10年のインドは面白くなるだろう。