障がい者の入社式が教えてくれた「テレワーク」に欠かせないこと写真提供:株式会社スタッフサービス・ホールディングス

「働き方改革」の号令ではさほど普及しなかった「テレワーク」が、コロナ禍で一般的なものになった。そのテレワークのひとつである「在宅就労(自宅でPCなどの通信機器を使った仕事)」には、メリットとデメリットがあり、雇用側と働く者の試行錯誤が散見される。そうしたなか、コロナ禍以前から重度身体障がい者の「在宅就労」を推進し、ES(従業員満足度)を高めている企業がある――株式会社スタッフサービス・クラウドワーク。先月行われた、同社のWEB入社式を取材し、「在宅就労」の理想のあり方を探った。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部)

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」からの転載記事「ダイバーシティが導く、誰もが働きやすく、誰もが活躍できる社会」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

コロナ禍以前の2015年に「在宅就労」をスタート

 人材総合サービスで知られるスタッフサービスグループ――その障がい者雇用を担う株式会社スタッフサービス・クラウドワーク(以下、SSCW)は、グループの特例子会社である株式会社スタッフサービス・ビジネスサポートの「在宅就労部門」が2020年4月に分割され、創設された会社だ*1

*1 スタッフサービスグループでは、スタッフサービス・ビジネスサポートを「事業所勤務型障がい者雇用」、スタッフサービス・クラウドワークを「在宅勤務型障がい者雇用」と区分している。

 SSCWは、重度身体障がい者の「在宅就労」に特化していることが特徴で、(前身会社だった)2015年9月からその取り組みをスタートしている。

 テレワークの一形態である「在宅就労」は新型コロナウイルス感染症の拡大ですっかり一般化したが、同社はその先駆けと言っていいだろう。障がい者の在宅就労支援を行う人材紹介会社やNPO法人とは異なり、身体障がい者を直接雇用しての在宅就労への特化、そして、(障がいのある)雇用者300人という大規模での事業展開は特筆に値する(2020年12月1日現在、在宅社員302名)。定着率の高さ*2 からも、「行政やさまざまな企業から見学していただくことも多い」(株式会社スタッフサービス・ホールディングス  広報部)という。

*2 SSCWの就職後1年時点の定着率は97.0%(障害者職業総合センター調べによる、身体障がい者の一般企業就職後の1年時点定着率は60.8%)

 重度身体障がい者の在宅就労に取り組んだ理由は明快だ。身体障がい者にとっての通勤は、移動の困難さに加え、体への負担や職場のバリアフリー環境の未整備がネックとなる。また、通勤出社の就労では、平日(日中)の通院時間や生活介助の確保もままならない。結果、“ICT(情報通信技術)を活用して、障がいのある人たちに適切な就労機会を提供する事業モデルが生まれたのである。