“制約を機会に変えて、障がい者がイノベーションを創出する支援を行う”一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(ACE)。そのACEでは、2018年から障がいのある学生を対象にしたインターンシップを会員企業との合同企画で実施している。そうした企業の一つとして、凸版印刷株式会社は、先月(9月)に対面形式の研修プログラムで学生2人を受け入れた。インターンシップを通じて、企業と学生が得たものは何だったか? その模様をリポートする。(ダイヤモンド・セレクト「オリイジン」編集部) 

*本稿は、現在発売中のインクルージョン&ダイバーシティ マガジン 「Oriijin(オリイジン)2020」に連動する、「オリイジン」オリジナル記事です。

ACEと会員企業の合同企画によるインターンシップ

 一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、ACE会員企業36社/2020年9月末現在)は、一昨年の2018年から障がいのある学生を対象にしたインターンシップを会員企業との合同企画で実施している。

 昨年2019年は計15社が実施し、全国31の大学から延べ95人の学生が参加した。

 障がいのある学生は、ACEを通じて、多業種のインターンシップに参加することができ、それぞれの企業が用意する、さまざまなプログラムで就業体験を行う。

 しかし、今年は、新型コロナウイルス感染症の拡大で、オンラインでのインターンシップが中心となり、多くの会員企業が昨年までとは違うスタイルでの実施を余儀なくされた。

 そうしたなか、大手印刷会社の凸版印刷(東京都千代田区)は、感染拡大防止策を十分にしたうえで対面形式(学生が社屋に通勤する形式)のインターンシップを実施し、一般従業員の始業開始時間と同じ朝9時から夕方まで、平日4日間にわたる研修プログラムで、精神・発達に障がいのある学生2人を受け入れた。

多岐にわたる、4日間の職場体験スケジュール

 インターンシップと言えば、「採用に直結するもの」、あるいは、「採用の一翼を担うもの」と思われることもあるが、ACEと会員企業の合同企画としてのインターンシップは、障がいのある学生が、働くことを理解し、働く意欲を向上させることを主目的としている。そのため、凸版印刷の研修プログラムも4日間という長丁場で、単なる企業説明やワンテーマの課題に向き合うものではなく、施設見学から始まり、ダイバーシティ&インクルージョン推進の説明、飛まつ防止パネルの制作作業、書類作成、封筒宛名貼り……といった多岐にわたる“職場体験”のスケジュールが組まれた。

 なかでも、3日目の午後に設けられた「先輩社員との交流」プログラムは、参加学生にとって価値の高いものだった。軽度の知的障害のあるKさんが先輩社員として2人に向き合い、まず、自身の就職活動のエピソードから入社時の思い出、現在の仕事内容を、ゆっくりと分かりやすく語っていった。

 「(Kさんは)なぜ、凸版印刷を選んだのですか?」「日常の仕事の中で、(Kさんは)どんなことがうれしいと感じますか?」といった学生の質問にKさんが真摯に答えていく姿には、凸版印刷の従業員としての誇りと充実ぶりが表れ、制限時間内で終わらないほどの温かな交流がなされた。

 Kさんと学生2人の一挙手一投足と会話のテンポが醸し出す空気感はオンラインでは成し得ないものであり、直接に対面し、会話することの意義を思い知るものだった。

インターンシップに連動する“キャリアセミナー”

写真は2019年開催時のキャリアセミナー(2020年はオンライン開催)

 ACEでは、インターンシップに連動して、障がいのある学生と会員企業が集う「キャリアセミナー」も年に1回実施している。学生が、先輩社員や人事担当者から直接に話を聞き、就職・就労への理解を深めていくものだ。今年(2020年)は新型コロナウイルスの影響でオンラインでの実施となったが、障がいのある学生にとっては、交通機関での移動がなくなった分、参加しやすいメリットもあった(35大学73人の学生が参加)。

 「オンラインでは、休憩時間やセミナー終了後に学生同士や先輩社員がざっくばらんに話す機会が作りにくいことに課題を感じました。しかし、オンラインでも、各企業から参加いただいた先輩社員(9社12名参加)が学生の質問に溌剌と答え、障がいについても臆することなくオープンに向き合う姿はとても印象的でした。自分たちの経験が学生たちの役に立ったと、先輩社員にとっても高いモチベーションを抱くことができる貴重な機会になりました」(一般社団法人 企業アクセシビリティ・コンソーシアム 栗原進事務局長)