ワークマンの戦略を
「アンゾフの成長ベクトル」で読み解く
内田:土屋さんの著書の中で土屋さんはワークマンの戦略について「ブルーオーシャン戦略」や「両利きの経営」で説明されていてよくわかるのですが、私は同じことを別のフレームワークでも説明できると思っています。
土屋:どんなフレームワークでしょうか。
内田:ビジネスの成長戦略を考える際に有効なフレームワーク「アンゾフの成長ベクトル」です。
下図のように、「製品・技術」と「市場・顧客」をそれぞれ「既存」「新規」で分類して4象限をつくります。
<左上>「既存の市場・顧客」に「既存の製品・技術」を販売します。それには市場浸透が必要です。
<右上>「既存の市場・顧客」に「新規の製品・技術」を販売します。ここでは製品開発を行います。
<左下>「新規の市場・顧客」に「既存の製品・技術」を販売します。ここでは市場開拓を行います。たとえば、既存の製品や技術を海外などにもって行きます。
<右下>「新規の市場・顧客」に「新規の製品・技術」を販売します。ここでは多角化を行います。これは「落下傘」とか「飛び地」といって、あまりうまくいかないといわれています。
この図で見ると、まず<左上>に創業時からの個人向け作業服に特化してきたワークマンがいます。
土屋:個人に対して作業服を愚直に提供してきました。
内田:近年の御社の戦略は、顧客に既存の作業着を売るだけでなく、自社開発で新規の製品をつくるという<右上>の「製品開発」です。自分たちはお客さんのニーズもよくわかっているし、きちんと捉えているということで、PB製品を増やしていきました。これは利益率アップ、差別化につながりました。
土屋:はい。
内田:次にWORKMAN Plusという新業態で<左下>の「市場開拓」に進みました。既存の製品を新規の顧客に売る。店内を観察して職人さん以外にも買ってくれる人がいることを発見し、新しい業態を開拓したのがWORKMAN Plusです。
このようにオーソドックスフレームワークである「アンゾフの成長ベクトル」でも御社の成長の歴史を見ることができます。
土屋:おっしゃるとおりです。目からウロコです。
内田:今後の戦略も見えてきます。本来なら、<左上>の職人さんに対してもっと既存商品を売ればいいのですが、成長余力はさほどでもない。すると<右上>と<左下>が成長のチャンス。<右上>は職人さんや一般客に向けて新しい製品をつくっていく路線で、<左下>は新規のお客さんに既存の製品を売っていく。これが成功し始めているのがWORKMAN Plus。この方法は今後も有効でしょう。