このままでは「2年半タダ働き」することになる

 この77万ドルで何年生活できるかは、毎年の生活費次第だ。研究によれば、退職後の生活費は毎年一定ではなく、高齢になるほど少なくなる。だがここでも話を単純にするためにエリザベスは年間3万2000ドルを使うと仮定する(金融資産から得られるリターンも物価上昇と相殺されるものとする)。

 この前提だと、彼女は24年弱生活できる(77万ドル÷3万2000ドル)。だがエリザベスが退職から20年後、85歳のときに亡くなったとすると、13万ドルの資産を使わないことになる。

 このとき、エリザベスは13万ドル分の経験を逃してしまったことになる。

 それ自体が残念なことだが、それだけではない。これだけの金を貯めるために、エリザベスはどれだけの時間を費やしたのだろう。13万ドルを19.56ドルで割ると、6646時間になる。

 そう、エリザベスは生きているうちに使い切れない金を稼ぐために、こんなにも長い時間を費やしたのだ。週50時間労働で計算すれば、2年半以上にもなる。言ってみれば、2年半タダ働きしたのと同じだ。人生の貴重な時間とエネルギーを、もっと他のことに使えたかもしれないのに。

 資産から物価上昇率より高い利子が得られ、社会保障からの収入もあったと仮定すると、彼女が働く必要のなかった時間はさらに長くなる。少なくともあと2年半以上前には引退できたし、生きているうちにもっとたくさんの金を使うこともできた。

「ゼロで死ね」

 もちろん、この計算が誰にでも当てはまるわけではない。たとえば、時給換算すれば、エリザベスよりはるかにたくさんの金を稼いでいる人もいるだろう。こうした高額所得者にとって、13万ドルは2年半もの不要な労働を意味しない。

 だが実際には、これらの人々は13万ドル以上の資産を残して天国に旅立ってしまう。時間給や年収が高い人ほど、働き続け、稼ぎ続けたいという誘惑に駆られやすいからだ。結局、人生の貴重な時間やエネルギーを無駄に使ってしまう。

 だから、エリザベスの例より収入が高い人にとっても、低い人にとっても、私からのメッセージは同じだ。

 ゼロで死ね。生きているうちに金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」を目指してほしい。

 そうしないと、人生の限りある時間とエネルギーを無駄にしてしまう。

(本原稿は、ビル・パーキンス著、児島修訳『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』からの抜粋です)