医療崩壊を巡る議論が活発だ。しかし、新型コロナウイルス感染症の診療の実態や日本全体の医療キャパシティ、緊急時の医療資源配分の方法論が考慮されていない論考も多い。こうした中、同じ問題意識を持ち、豊富なデータで問題提起した『医療崩壊の真実』の著者の一人であるグローバルヘルスコンサルティング・ジャパンの渡辺幸子社長の勧めもあり、新型コロナウイルス感染症の重症診療をする集中治療医として、また災害医療を学んだ救急医として、課題を整理し、打開策の提案を寄稿したい。(名古屋大学大学院医学系研究科救急集中治療医学分野医局長、集中治療専門医、救急科専門医 山本尚範)

日本の集中治療のキャパは小さく
急性期医療も看護師不足

山本尚範(やまもと・たかのり)/名古屋大学大学院医学系研究科救急集中治療医学分野医局長。救急専門医、集中治療専門医。現在は名大病院で救急・集中治療に従事している
山本尚範(やまもと・たかのり)/名古屋大学大学院医学系研究科救急集中治療医学分野医局長。救急専門医、集中治療専門医。現在は名大病院で救急・集中治療に従事している。

 そもそも医療崩壊とは何か。死者数の最小化が医療の目的だとすると、新型コロナウイルスパンデミックにおける医療崩壊の本質は重症患者(人工呼吸器またはECMO(体外式膜型人工肺)が装着されている患者を「狭義の重症患者」とする)の数が集中治療室(ICU)のキャパシティを超えることである(1)(2)。中等症の患者が適切な治療(酸素投与、血栓形成予防、レムデシビルとデキサメタゾンの投与)を受けられない場合も、予後が悪化し得る(3)(4)

 実は、日本の「集中治療のキャパシティ」は非常に小さい。そのキャパシティは「4つのS」。つまり、「Space」「Staff」「Supply」「System」で決まる。