伊豆箱根鉄道三島駅の様子伊豆箱根鉄道三島駅の様子 Photo by S.W.

 さて、駅から徒歩で線路沿いを歩くとしよう。先に三島にかけてS字カーブと記したが、何故このようなカーブになったか。それは、駿豆線が開業した1898(明治31)年当時の三島駅は、現在の御殿場線の下土狩駅だったからである。

 つまり、駿豆線は現・下土狩を始発駅とし、三島広小路を通り、修善寺方面に至っていたのである。1934(昭和9)年に現在の東海道線が開通し、三島駅が現在の場所に移動したのを機に、駿豆線も現在の三島駅に乗り入れるようになった。

 そのため、三島広小路~現・下土狩間は廃止となった。線路が剥がされて約90年近い年月が経ってはいるが、線路が敷設されていたと思われる場所を歩くと、今でも多くの空き地が散見でき、そこには「伊豆箱根鉄道社有地」の看板を見ることができる。

 また、長泉町下土狩あたりに流れる用水路際には、駿豆線開通当初のレンガで組まれた橋台が数基残っており、現在でも家屋の土台の一部として120年以上も立派に現役で生きている。これはまさに鉄道のロマンの1つであろう。

三島駅まで歩きながら
185系「踊り子」号を見送る

惜別のときが迫る特急踊り子号185系惜別のときが迫る特急踊り子号185系 Photo by S.W.

 日本の鉄道は1872(明治5)年に走り出し、148年の歴史を持つ。日本のあちらこちらに、まだまだこういった歴史の遺構が未発見のまま残っていることだろう、そう思うと、限りなくロマンが溢れて行く。そんなことを考えながら、三島駅まで歩いてみた。

 ふっとホームを見ると、帰りも乗ろうと思っていた185系「踊り子」号がちょうど発車して行くところであった。しまった!発車時間に間に合わなかった……。行きも帰りも、185系に乗る予定だったのに、行きしか乗れなかった……。帰りは、「ありがとう」と「さようなら」を言うはずだったのに……。

 私は涙が出そうになっていた。頭が澄んだ水になってしまっていて、それがぽろぽろ零れ、その後には何も残らないような甘い快さだった。

 今回紹介した伊豆箱根鉄道は、日本全国を走る魅力的なローカル線のほんの1つに過ぎない。新型コロナ禍で外出をためらってしまう昨今。でも、外に出て楽しみたい――。まずは、その土地の魅力が詰まったローカル線の鉄道旅から、楽しんでみようではないか。

(鉄道ジャーナリスト 渡部史絵)