リモートワークが浸透し、職種によってどこにいても仕事できる時代になった。インバウンド需要が見込めない今、地方の側でも地域振興に新しい旅のスタイルであり働き方、“ワーケーション”に期待をかける気運が高まっている。(地域ジャーナリスト 甲斐かおり)
ワーケーションに期待する地方自治体
新しい旅のスタイルであり、新しい働き方でもあるワーケーション。2019年11月、和歌山県や長野県の呼びかけで65自治体により設立された「ワーケーション自治体協議会」は、2021年3月18日時点で加盟が175にまで伸びている。和歌山県はサテライトオフィスの企業誘致に力を入れていたり、長野県は観光にも波及させるなど、自治体によって特色がある。
ワーケーションには、リゾート地や温泉地など普段とは異なる環境で仕事できるといった利点や、休暇の合間に仕事できる環境があれば少ない休みで地方に長期滞在できるという良さがある。
ただどうしてもワーケーションと聞いてモヤモヤした気持ちになるのは、「ゆったりしたリゾート」「目の前に広がる美しいビーチ」といったうたい文句と、施設にこもって「パソコンに向かって仕事する」行為が矛盾しているようにも感じられるからだ。
どうせパソコンに向かうのなら都会でもいいのではないか。遠くまで行く意味はあるんだろうか。そんな疑問も浮かぶ中、ワーケーションを実証実験のスタイルで行っている地域があると知った。長崎県の五島市である。2019年開催の「リモートワーク実証実験」、2020年の「五島ワーケーション・チャレンジ」にはそれぞれ約50のエントリーがあり、多くのビジネスパーソンが集まり、島でのワーケーションにトライしたという。どんな経緯でこのプログラムが行われてきたのか。現地を訪ねてみた。