というのも、身長を比較すると、妻の方がAさんより20センチ低い。しかも、Aさんは趣味で格闘技のキックボクシングを習っていたことから、余計に体格が違って見える。

「もちろん、暴力で返せば簡単に終わらせることはできる。でも、格闘技をしている以上、妻の暴力にひたすら耐え続けました」

 Aさんは、妻の嫉妬や束縛が激しかったことから、落ち着かせるために職場を辞めざるを得なくなった。趣味で続けていたダンスも、妻から「行くな」と言われて辞めた。

 DVによる通報を何度か繰り返した後に、警察は妻を実家に連れて帰り、2人を別居させた。Aさんは離婚したいと希望しているものの、妻は拒んでいる。離婚調停の結果、実家と自宅を1週間に半分ずつ行き来することを条件に婚姻関係が続くことになった。しかし、妻はすでに9カ月間、実家に帰ったままだ。

「炊き出しに行ったらどうか」の言葉に絶句
DV被害の支援対象が女性だけの現状に絶望

 女性から暴力を受けたとき、どうすればいいのか。Aさんは、内閣府の「DV相談プラス」などの公的な相談窓口に助けを求めた。しかし、絶望したという。

「DV被害の自助グループがあるのは女性だけで、男性は参加できません。職がない人向けの資格を取ることができる支援も女性向けで、男性にはない。そもそもDV相談窓口の担当者は女性のため、資格のことを聞いても『ハローワークに行ってください』とか、『暴力を返しちゃいけない』という一般的な話ばかり。あげくに『男性はどこに行けばいいのか?』と聞いたら『(生活困窮者向けの)炊き出しとかに行かれたらどうですか』と言われ、驚愕しました」

 Aさんが「DV被害の相談なのにおかしくないですか?」と疑問を投げかけても、その女性相談員には通じなかったという。

「東京都のウィメンズプラザには、週2回、男性のための悩み相談所があるんです。そこは相談員が男性なので話を聞いてくれるのですが、具体的な支援はない。仕事も趣味も辞めざるを得なくなり、離婚できないまま別居が続く中で、自助の集まりもなく、ずっと孤立させられている。学生時代の心の病による入院で学歴もなく、無職になって何も残っていない。このつらい気持ちを誰にも分かってもらえないのです」

 こうして眠れない日々が続き、医師に診てもらったところ、「自律神経失調症」及び「心的外傷後ストレス障害(PTSD)」と診断された。

 Aさんは、家庭内で「女性から暴力を振るわれた際に男性が対応すべきガイドライン」や、「男性DV被害者の支援策をつくってほしい」と訴えている。

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