岡田:いや実際、0メートルの旅』を書いている途中に、いろんな旅の記憶を振り返りながら、「そもそも旅ってなんだろう?」とずっと考えてたんですよ。

 それで、「定まった日常を離れて、どこか違う瞬間へ自分を連れていくこと。そしてより鮮明になった日常へ戻っていくこと」が、僕が旅を通してやっていることだと思ったんです。

──日常に戻っていくことが旅、ですか?

岡田:日常から一度離れて旅に出て、想定外のものたちに触れる。それ自体が旅だと思われがちですけど、戻ってきた時に、日常をより鮮やかに過ごせるようになることを含めて、旅の魅力なのかなと。結局、日常の中で大部分の時間を過ごしているわけですし。

──たしかに、そうですね。では、岡田さんにとって『0メートルの旅』とはなんですか?

岡田:(笑笑)。さっきお話ししたみたいな、予定通りにいかないことを受け入れた瞬間とか、偶然の巡り合いに心奪われた瞬間ですね。つまり、どこへ行こうと、予定も目的も固定概念もすべて吹っ飛ばして、いま目の前にある0メートルを愛すること。それが旅の正体じゃないかと僕は思っています。

 南極にいようが部屋のなかにいようが、想定外を受け入れるゆとりを残して過ごし、目の前の0メートルを面白がれるかどうか。そういう態度の変化ひとつで日常はずっと鮮やかになると思うし、旅への渇きを満たすことはできるんじゃないかなと。

 2020年、そして2021年に入ってもまだ、旅が消えてしまった世界だからこそ、今回の本が、誰かにとっての「0メートルの旅」につながったらうれしいな、と思っています。(おわり)

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