人事は表には見えないルールがある

 私の経験則ですが、スポーツ界の人事にはさまざまな暗黙の「法則」があります。その中でも一番にあたる法則は「最初に名前が出たものは潰される!」であります。今回もそのルールがあたり、川淵氏の会長案はあっという間に消えてしまいました。

 第二の「法則」も作動しました。「去るものは容赦ない攻撃にあう」です。森会長辞任が報じられるとそれまで口を閉じていた人々がこぞって「口撃」を開始しました。政府・自民党は「辞める人が後継指名とはありえぬ」といい、組織委の理事も突然表舞台に現れ、テレビでも森批判をはじめました。

 この時点で私は最も回避したい結果、あなたの会長就任に落ち着く道筋が見えてきたのです。そして、東京五輪の実現のためにあなたが決心するしか道のない極限状況が訪れました。

 就任後のスピーチに、私はあなたの並々ならぬ大会開催への決意を感じました。

 新しいビジョン、新しいオリンピックモデル、その言葉で私には十分でした。

 あなたは、五輪が安心・安全にできるための施策を示し、これまで都民・国民に信頼を得ることができなかった状況を変えることに尽くすのでしょう。そしてコロナがあっても可能なオリンピックのあり方を提示し、スポーツという身体文化が人類にとってかけがえのない免疫力を培うリーサルウェポンであることを示すでしょう。カルガリーオリンピック、スピードスケートの全種目入賞に挑戦し、最後の5000メートルを滑り終わった時、両手を広げ涙を隠さなかったあなたの姿を私は忘れていません。

 あなたが東京五輪開会式で、満面の笑みでスピーチをする姿を見ることができるよう祈っています。

 きっと、その時、私がかつて感動したアスレティシズムが、オリンピズムとして完成するのでしょう。

 ご健勝を心から祈ります。

恐々謹言